「はるちゃん…また今度こよ」
「ごめんね、お母さん。わたし、歩くの遅くって…」
お母さんははっとはるちゃんの顔を見たの。そした
らお互いの目から涙がポロポロあふれてきちゃった。
それからゆっくりおでことおでこをコッツンコしたの
ね。
「なんであやまるの、お母さん今日はすごく楽しかっ
たなあ。だってはるちゃんに初めて道案内してもらっ
たし、かもさんともお友達になれたし。それにお母さ
ん、はるちゃんの足大好きよ」
「ほんとう?」
「ほんとうよ。ゆっくりでもいいじゃない、これから
も二人でしっかり歩いていこうね、はるちゃん」
「きれいだったね!」
「また今度こような!」
「いやあ、今日は充実した一日だった」
美術館から出てくる人々の声に、はるちゃんと
お母さんは包まれたよ。
「おかあ、しゃん…」
お母さんははるちゃんの顔を見ることができない
よ。ただギュッとはるちゃんの手を握りしめるだ
け。二人は何も言わずしばらくその場に立ち止ま
っていたんだけど、ようやくお母さんが重い口を
開いたのね。