「グアッググーグアッ!」
「あそこを曲がれば美術館だって!」
はるちゃんはうれしくってうれしくってピョン
ってかるくジャンプしたの。かもはまたグアッと鳴
くと、すっかり日の落ちた薄暗い空へ羽ばたき、家
へ帰っていったよ。
「かもさんありがとー!」
顔がくちゃくちゃになるくらい笑顔を浮かべて、
はるちゃんは大きく手を振ったのね。
かもに教えてもらった道を曲がると、一年間待ち
こがれた美術館が夕闇の中、シルエットとなって浮
かびあがったよ。でも美術館の時計はすでに五時を
指していたの。
駅に着いたころに比べ、あたりは暗くなっちゃ
た。お母さんは不安でたまらないよ。もし間に合
わなかったら…にこにこしているはるちゃんを見
つめたの。いっそうおんぶしてあげようかとも考
えたよ。でもね、はるちゃんはこれをすごくいや
がるの。せっかく二本足がくっついているのにど
うして、って悲しそうな顔になるんだよ。
「お母さん、わたし歌うたってあげるね!」
はるちゃんのかわいい歌声が夕焼け空に溶け込
むよ。それから少しして前を歩くかもが、ふっと
振り返ったの。