改札を出てすぐに、お母さんがかばんをゴソゴソって
やっていたのね。
「どうしたの、お母さん?」
「んー、地図、忘れちゃったみたい…」
「えー!」
はるちゃんはびっくり。美術館に行けるかなあって心
配で、胸がバクバク。
はるちゃんが生まれた春を、家族の中で一番最初に見
つけたのもはるちゃん。幼稚園の帰りにね、川の土手を
指さして、「つくしの子が顔を出してるう。まだ寒いか
らもう少し土の中で寝てればよかったのにい」とつくし
とお母さんを交互に見ながら言ったの。そしたらお母さ
んはね、「すごいはるちゃん!はるちゃんは季節探しの
名人ね」って感心しながら言ったんだよ。