緑のプレゼント

                              

        

 うわあ。いいお天気!
 とっても気分がいいよね。チュピ。
 ねえ。知ってる?今日は、ぼくの誕生日なんだよ。
 陛下ったら、サプライズパーティーが気に入っているみたいだから、みんなの分をやってくれているんだけど、ねえ、チュピ。ぼくのお祝いもしてくれるかなぁ。うふふ。なんだか、すっごく楽しみだねっ
 あ。でも、ぼくが楽しみにしていたら『サプライズ』にはならないから、陛下、悲しむかなぁ。わあ。どうしよう。ぼく、楽しみにしちゃってるよ。
 びっくりしたふりをすればいいのかなぁ。
 うまくお芝居できないと、陛下が悲しむかなぁ。悲しそうな陛下は見たくないなぁ。どうしよう。
 ねえ、チュピ。どうしたらいいと思う?

 あれ。ゼフェルだぁ。公園の噴水の前で、何かやっている。
「おーい。ゼフェルゥー。そこで、なにやってるのー?」
 走って近寄っていくと、ゼフェルがにやにやしながら口を開く。
「なにって……。魚でも釣ってるように見えっかよ。」
「ううん。見えない。」
 どう見ても、いつものメカの試運転……だよね。また、変な形だけど。
 ぼくがのぞき込むと、ゼフェルったら、またぼくにはよくわからない自慢を始めたんだ。素材がどうとか、二重構造がどうとか。……自慢してもいいから、もっとわかりやすいことをいってよ……
 ゼフェルと別れて、ぼくは花壇に向かった。
 ぼくの前に緑の守護聖だったカティスさまから譲ってもらった、カティスさまの花壇。今日も、とてもきれいに咲いていて、きっとカティスさまが見たら喜んでくれるはず。だって、陛下だって喜んでくれるんだもん。
 水をやっていると、ランディが走ってくるのが見えた。
「おーい。マルセルー!」
「どうしたの?ランディ。そんなに急いで。」
「陛下がね、パーティーの準備ができたから、いらっしゃいってさ。早くいこう。」
 あれ?
 サプライズ……じゃ、ないんだ……
 うわあ。お祝いしてもらえるだけでも嬉しいはずなのに、ぼく、がっかりしちゃってるよ。う、嬉しいんだよ?嬉しいんだけど、期待、しすぎたのかなぁ。陛下が、ぼくのことをどうやってびっくりさせてくれるんだろうって。
 ランディがぼくの顔をのぞき込むから、あわてて普通の顔をして、ぼくは陛下のところへいった。

        

 パーティーは、もちろんにぎやかで、今までの誕生日パーティーと同じように、ぼく以外の守護聖はもちろん、協力者の人や、教官たち、新宇宙のアンジェリーク、レイチェル、アリオスも、ちゃあんと参加してくれていた。
 やっぱり、ぼくが楽しみにしているのを知っているから、サプライズには、してくれなかったんだ……。お祝いしてくれるのは、とても嬉しいんだけど、やっぱりぼく、どんな方法でびっくりさせてくれるのか、それを楽しみにしていたんだよね。
 気がつくと、他の人のパーティーでも、そうだったんだけど、お酒を飲む人がでてきた。
 飲むのはいいんだけど、なぜがぼくにも飲ませたがる人がいるんだよね。なぁんて思っている間に、いつのまにかオスカーさまに何か飲まされたあたりで、目の前が真っ暗になってしまった……

        

「マルセル。マルセル。」
 ぼくを呼ぶ声がする。
 とてもよく知っている、でも懐かしいその声。
 ぼくは、目を開けた。
 そこにいたのは、長い金髪を、ぼくと同じように後ろで束ねた男の人。とてもよく知っている、懐かしいその後ろ姿。
 その人が、ゆっくりとこちらを向いた……
「カ、カティスさま?」
「俺を覚えていてくれたのか?マルセル。」
「忘れるわけがないじゃないですか!カティスさま!」
 ぼくがそういうと、カティスさまはにっこり笑って、こういった。
「今日は、誕生日なんだな。おめでとう。マルセル。今日はこれをいいにきたんだ。」
 そして、二度と会うことがないと思っていたカティスさまと、ぼくはお酒を飲んだ。あの、ぼくのために用意してくれたワインを。
 そしていろんな話をした。
 ぼくは、あのあとのカティスさまの話を聞きたがったし、カティスさまは、ぼく以外の守護聖の話と、女王試験の頃の話や、新しい女王陛下のこと、そのあとにまた行われた女王試験の話、そのふたりが新しい宇宙でがんばっているという話。あの、恐ろしかったレヴィアスや偽守護聖たちとの戦いの話。
 ぼくは、求められるままに、時々脱線しながら、がんばってお話ししていた。そして、カティスさまは、にこにこと笑いながら、ぼくの話の続きを促してくれるから、ぼくは夢中で話し続けた。
 話が一段落ついたら、なんだか僕はちょっと眠くなってしまった。
 カティスさまは、笑って、眠るようにいってくれたけど、せっかくあえたんだもん。ぼくは眠りたくなくて、がんばっていたんだけど、結局少し眠ることにした。
 そしてぼくは、もう一度目を閉じた。
 目が覚めても、まだカティスさまがいてくれることを祈って。

        

 目をあけたとき、そこはパーティー会場で、みんながぼくをのぞき込んでいた。カティスさまは、いなかった。
「どうでした?マルセルさま。」
「え?どう、って?」
 女王陛下が、ぼくの顔をのぞき込んでそういったけど、ぼくにはその言葉の意味が分からなかった。
「懐かしい誰かさんに会えなかったかい?」
 オリヴィエさまも、意味の通らないことをいう。
 だって。ぼくはさっきまで、カティスさまと一緒に……あれ?
「オレさまの技術は、大したもんだろ?」
「本人を連れてくるのがいちばんだったんだけどな。クラヴィスさまの水晶でも、メルの占いでも、王立研究院の調査でもウォン財閥の情報網にも、どこにも引っかからなかったからな。それでゼフェル坊やのご登場、というわけだったんだ。」
「坊やじゃねーって!」
 オスカーさまの説明で、やっとわけがわかった。
 つまり、さっきのカティスさまは、ゼフェルが作ったメカで、どうやったのかはわからないけど、ぼくの夢の中にカティスさまの映像を映したんだ。カティスさまが見つからなかったから、せめて幻でも、カティスさまをぼくに会わせてくれようとして……
 嬉しくて、涙が出た。
「ありがとう。ゼフェル。ありがとうございます。陛下。ぼく……。最高のプレゼントです。」
 ぼくが泣き出したから、みんなびっくりしていたけど、ぼくのこの言葉を聞いて、やっとほっとしてくれた。
 だって、ほんとうに嬉しかったんだ。
 たとえ幻でも、カティスさまと会えたんだから。
 しかも、ぎりぎりまでカティスさま本人を捜してくれていたんだって。
 あえなかったのは残念だけど、きっとまた、どこかであえる。
 そんな気がする。
 そしてまた、夢ではなくて、本当に、一緒にお酒を飲むんだ。あんまり強いお酒は無理かもしれないけど、それでも、きっと喜んでくれると思うんだ。カティスさまって、そういう人だから。

 カティスさま。ぼく、ちょっとだけ大人になりましたよ。ほんのちょっぴりだけど、お酒もつきあえるようになったんですよ。そして、みんな、みぃんな、とっても優しくて、すてきな仲間です。
 カティスさまのワインを片手に夜空を眺めていると、チュピがグラスの縁にとまって、ほんのちょっぴり、ワインを飲んだ。
 チュピも、ぼくの誕生日をお祝いしてくれるんだね?
 チュピの顔が、なんとなくさっきの夢のカティスさまとだぶって見えた。

                                fin.

 さくさくっとできてしまいました。
 オスカーさまの時にあれほど苦しんだのは、何……?(爆)

 カティスさま登場部分を少々加筆。満足です。
 オスアン風味は、全くないのですけどね。あははー