そ よ 風 の 小 径

第23回  真冬の向日葵  (2009年 12月 27日)

  ひまわりの花のように明るい花友が 「これから向日葵を届けるから」 と電話してきました。

  折しも日本列島は冬の低気圧にすっぽり包まれていて、豊橋でさえ小雪が舞う、そんな昼下がりです。ちょっぴり

 あわてん坊の彼女ですから、もしかしてなにかの間違いかもしれないと思いながら待ちました。

  やがて登場した花友の腕の中には間違いなく夏の主役ともいえるあの向日葵が一抱えも収まっていたのです。

  「どうしたの?それ」

 という問いに彼女も興奮気味にこう説明してくれました。

  郊外をドライブしていたらテニスコート3個分くらいの空き地があって、そこに向日葵がたくさん咲いていて、

  「自由にお取り下さい」  という立て看板が目に入ったそうです。

  既に何人かの人が入り込んで摘んでいたので自分も参加

 したのだけれど、きれいなうちに持って行ってあげたくて電話

 したとのこと。「それはそれは。」と押し頂いてみれば、確かに

 向日葵には違いないのですが、夏のそれと違って色彩が抑え

 気味な気がします。

  これは想像ですが、まだ暑い盛りに種が蒔かれて、温暖な

 土地ゆえにぐんぐん背丈も伸びたけれど、いざ花開く時に冬

 を迎えてしまい、「これはどうも勝手が違うぞ。」などと思いな

 がらも必死に冬の日差しを受けながら縮こまって咲き続けて

 いるのではあるまいか・・・・。

  なにはともあれ、私の手元に渡った向日葵だけは、寒い思いをさせてはならないと居間の南側のベランダに面した

 テーブルの上に置くと、なんだかほっとしたような静かな香りを漂わせ始めました。

  常日頃から季節の花に囲まれた生活をしている私ではありますが、突然出現した季節外れの花とどうつきあってい

 けばいいのか、多少の戸惑いを覚えるのです。というのも、花屋さんで買ったり、人からいただいたりした花を、どうし

 ても一度は描かずにはいられない習性が私にはあるので、今の季節、ポインセチア、山茶花、椿、日本水仙と順番に

 描いてきて、時にはその中の幾つかをひとつの画面に入れて制作してみたりしているわけですが、そこに突然向日葵

 が登場することになると、見る人にしてみれば、 「えーどういうことー?」 ということになるわけで、それもまた面白い

 かもしれないと、たった今思い直したところです。

  もしポインセチアの隣に黄色い向日葵が描かれた絵を見つけたら、そういう事情があったのだと合点していただけ

 るでしょうか。
   

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