どちらを優先するべきかは明白でした。諦めて既にホームに到着して出発の時刻を待っているこだまに乗りこもうと
したとき、階段を駆け下りてくる人の姿が目に止まりました。見れば先程の女性乗務員で、手には見覚えのある紙袋
を掲げています。うれしさに声もうわずり
「ありがとう!」 と受け取ろうとすると、 「その前にこの書類にサインが必要なのです!」
と相手もうわずった返事。無理もありません。既に発車のベルが構内いっぱいに鳴り渡り、ドアは今しも閉められよう
としているのですから。
こんな時はいったいどうすればいいんでしょうね。結局手を伸べれば届く手荷物を私は受け取ることなくドアが閉め
られ、おそらく汗びっしょりになってここまで来てくれた人の好意は、実りませんでした。せめてガラス窓のこちらから
発したお礼の言葉は口の動きをたどることで相手に通じたでしょうか。
水彩画教室のために準備した品物は間に合いませんでしたが、忙しい業務の中で親切な対応をしてくれた若い業
務員さんの姿勢には、感銘しました。もっとも忘れ物をしたために相手にもっと忙しい思いをさせてしまった自分への
反省も半端なものではありませんでしたが。
で、その大切な紙袋の中身のことですが・・・・・。松ぼっくり、ヘクソカズラ、ドングリ、椎の実など絵を描く人ならでは
の価値を持つ品々ではありました。
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