そ よ 風 の 小 径

第19回  ソフトクリーム  (2009年 8月 30日)

  旅の思い出にソフトクリームがいつも寄り添うのは、私だけでしょうか。

  歩き疲れてちょっと立ち止まったとき、良い具合にソフトクリームの売店がそこにあるということなのですが、

 うまくしたものでその土地の特色を生かした種類が並んでいるのには感心します。

  今年の春、まだ浅い時期に日本で一番早く春が訪れるといわれる房総半島を訪ねたときに出会った菜の

 花ソフトもその一つでした。

  ほんの僅かに黄色味を帯びたソフトクリームは、もうすぐ花で埋まる季節が来ることを約束しているかのよ

 うに軟らかな味わいをもって、口の中いっぱいに広がったのでした。

  中には思わず吹き出してしまったソフトクリームというのがありまして、忘れもしない昨年の秋、金沢を訪れ

 たときのことです。兼六園を散策していると池のほとりに 「金沢一おいしいソフトクリームのお店」という看板

が目に入りました。「へえ、そうなんだー」と感心して

お店に入りました。もちろんそのソフトクリームを注

文し、出来上がるまでの間に

 「金沢一美味しいんですって」 

と聞くと、売店の女性がいたずらっぽく笑って 

 「言ったもん勝ちです。」

 な、なあるほどね、ともう一度感心したものです。

 多分、金沢一美味しかった{ような}気がします。

今年の夏、仙台へ行きましたがソフトクリームは
食べずじまいでした。

  ソフトクリームで忘れられないのは、愛知万博です。住んでいる豊橋に近い長久手が会場だったので何度か

 訪れる機会に恵まれたものでしたが、何気なく立ち寄ったブルガリア館でヨーグルトソフトを注文したときのこと

 です。笑顔でソフトクリームを手渡してくれた若い女性に 「ありがとう。」 と言ってふと彼女を見て思わずソフト

 クリームを落っことしそうになりました。

  「な、なんて綺麗な人!」

 こんな美しい人、この世にいるんですか、とソフトクリームを受け取るのも忘れてつい見入ってしまったのです

 が、同じ場所で同じ経験をされた方も大勢いらっしゃることと思います。

  そういえば、7月の大相撲名古屋場所で大活躍をした大関琴欧洲もブルガリア生まれの美形ですよね。

  この夏もどこかの旅の空の下で美味しいソフトクリームに出会えますように。
   

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