そ よ 風 の 小 径

第12回  水彩画を楽しむ  (2009年 3月 22日)

  毎年この季節になると、新聞の折り込み広告に様々な習い事に対するお誘いのチラシが入ります。

 水彩画、油絵、ボタニカルアート・・・など、筆一本で家にいながらにして始められるというのが売りのこのセール

 スを否定するものではありませんが、一様のうたい文句が 「初めての人でも無理なく美しい絵が僅かな時間で

 描けるようになります。」 というのです。これに対しては、「それは無い。」 ときっぱり言うしかありません。

  習い事は楽しいことですし、幾つになってもチャレンジ精神で向かうことは大切なことです。でも好きなことが

 あっという間にマスターできるということは、まずありませんからそのところは是非ご理解下さい。 

  私自身、透明水彩絵の具を使って季節の花を描くことを

 テーマにして歩み始めてから、随分の時を経てきましたが、

 歩みを進めれば進めるほどに{随分やっかいなことに手を

 染めてしまった・・・・}という思いがつのります。

  でも好きなことを続けてくることができた喜びと感謝もまた

 同じくらいあって、飽きることがありません。

  透明水彩画の魅力は、なんといってもその色の持つ美し

 さです。しかも色数が多くて、それらを混色したり重ね塗り

 することで更に多様な色彩を生み出すことができることに

 夢中になりました。

  しかしながら透明水彩の有限性は、薄い色の上に濃い色を塗り重ねることはできますが、濃い色の上に薄い色を

 重ねることができないことでした。

  そこで登場するのがマスケットインキと呼ばれる白ヌキインキです。これは濃い画面の中に小さい白色や淡い色の

 花などをたくさん描くとき、あらかじめ白い紙の上にマスケットインキで花を描いておきます。その後画面に水を張って

 濃い色を塗った後でマスケットインキを剥がせば、淡い色を描く部分がキープされているという具合です。

  その他にも水彩色鉛筆、ソフトパステル、クレヨンを使うなど、様々な工夫をこらして濃い色の上に薄い色を重ねる

 ことができないという課題に挑戦しています。これもまた水彩画を描く過程で、楽しみな作業のひとつです。

  水彩画の楽しみ方は、お一人お一人違って良いと思いますが、その数多くの美しい色の名前を知ることも大切な

 ことと思います。そこで、私の担当している水彩画教室では、色の名前をできるだけたくさん、覚えていただくことに

 しています。

  幸い水彩画教室を続ける受講生の多くは、それを楽しんでくれているのですが、なかには 「しまった!こんなに

 大変なことだとは知らなかった。」 と思う方もいるかもしれません。それを考えると12色セットの絵の具で対処でき

 る方法を編み出せたらいいのですが、夥しい季節の花を前にするとなかなかそうもいきません。

  そんな悩みを抱えながら新しい生徒さんを迎えて絵の具の説明をしていたら、案の定 「わあ!こんなに覚えるこ

 とがあるなんて大変だあ。」 という言葉が返ってきました。

  恐縮のていでいると、明るく 「これでは、ぼけてなんかいられませんね−」 ですって。その調子!

  これからも一緒に水彩画をずっと楽しんでいきたいと思います。
  

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