風 誘 讃 花    


       第 40 回 (最終回)   手のひらに紋白蝶が・・・   (2018年5月1日)   

  信じられないことですが、今、私の手のひらには紋白蝶が佇んでいます。実は先ほど車で20分ほどの郊外にある畑から

帰宅したところです。本日の収穫は、菜の花がバケツ一杯と、エンドウ豆少々、キャベツが一個といったところです。それか

らタンポポとか姫女苑を少し絵のモデルに持ち帰りました。どうやらそれらのうちのどれかに付着して来たようなのです。

 広々とした野原からマンション内という環境の激変にもかかわらず、意外にも落ち着いた様子で花の束に埋もれています。

更に驚いたことには、手を差し伸べてみたら、チョコンと乗ってきたではありませんか。ほんの半月程前に、たくさんの紋白蝶

を描いていた手の上に、本物の蝶が乗っているのです!!!

 菜の花の絵に紋白蝶を加えたくて、図書館に出掛けて蝶の図鑑を借りてきた話は、前回紹介しましたよね。できることなら

実物を観察したいと思ったものの、虫取り網を携えて出掛ける元気もなく、ま、いいか、と本を頼りに私なりの蝶を描いたので

した。それが今、鼻先僅か30センチほどのところに息づかいさえ感じさせるようなリアルさで紋白蝶が

 「 さあ、好きなだけスケッチして下さいな」 というかのように、お行儀よくしているのです。「 ではお言葉に甘えて・・・」

なんて呟きながらスケッチブックを取り出してみたものの、なんだか落ち着きません。

 蝶にしてみれば、早いところ家の外に出して欲しいのが本音かも知れません。でも、滅多にお目にかかれないチャンスを逃す

わけにはいきません。取り敢えずじっくりと観察することにしました。

 驚いたことは、紋白蝶が想像していたよりもずっと小柄だったことです。菜の花畑の周囲を飛び回る蝶は、その勢いもあって

かもっと大きいサイズだと考えていました。羽の模様ももっとはっきりしているとばかり思っていたのが、ソフトパステルで描いて

ちょうど良いくらいの柔らかさでした。

 それにしても・・・・と思うのは、どうしてこんなに良いタイミングで蝶と接することができたのでしょう。先刻学習したばかりの蝶

図鑑によれば、蝶々は卵を産むと間もなく死を迎えるそうで、自然界ではその死骸を蟻たちが巣に運んでいく姿が見受けられる

そうです。そういえば目の前の蝶がおとなしいのは、間もなくその時を迎える準備をしているからかも知れません。

  「 好きなだけうちにいてくれていいからね」 蝶を菜の花の上に移し替えながら、そっと語りかけたことでした。


   ※  トップページでお知らせしましたように、風誘讃歌は今回40回をもちまして終了致します。

      次回からは 「 そよ風に乗って 」 と題してアトリエマネージャーの独り言を連載致します。

      3年余にわたる長き間、風誘讃歌を見ていただき、ありがとうございました。
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