風 誘 讃 花    


      第 32 回   ベ ラ ン ダ の 葡 萄   (2017年9月1日)   

  暦の上では立秋をとうに過ぎていますがこの季節、皆様はどのようにして暑さを凌いでいらっしゃいますか?

  窓辺を緑のカーテンで飾るのも良いものですよね。我が家もスケッチを目的で購入した鉢植えの葡萄が健やかに成長し、

 今ではその役目をしてくれています。

  ゴールデンウィークが過ぎた頃から、爽やかな新芽が膨らんで、見る間に大きな葉を茂らせてくるのですが、そうなると

 揚羽蝶が卵を産み付け、幼虫を育てる格好の場所になることを知りました。自然の摂理とはいえ、美しい葉がみるみるう

 ちに穴だらけに変身してゆく有様を見るのは、嬉しいことではありません。そんな時はピンセット片手にせっせと幼虫駆除

 に励みます。

  デラウエアと呼ばれる我が家の葡萄は、色づくと美味しいことも発見しました。そうなると放っておかないのが、食いしん坊

 のヒヨドリです。まだ青くて食べられない状態の頃から、様子を見にやってきては、糞をお土産に置いていきます。

  自然の恵みですから、少しぐらいは分けてあげても良いとは思うのですが、ベランダの手摺りに盛られたヒヨドリの糞を見つ

 けると、いっぺんにそんな気持ちは失せるというものです。

  かくして葡萄の熟れ時は、ヒヨドリとこちら側のせめぎ合いになるわけです。でもそういつも監視していられないので、結局は

 ヒヨドリの粘り勝ちになることが多いのです。それでも今年ばかりは譲れない事情があります。それは例年以上に美形の葡萄

 が数多く実ったために、創作意欲が湧いて、どうしても葡萄の絵をたくさん描きたいという思いが、募っているからです。

  うかうかしていると例年のごとくヒヨドリに啄まれ、葉のほうは昆虫たちによってレースのカーテンに変身してしまいます。そう

 なる前に描いてしまわなければならない、というわけで目下葡萄のスケッチに余念がありません。

  「 そよ風のアトリエ 」 内に展示している葡萄の絵が完成するまでには、そんな裏事情があるのです。
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