風 誘 讃 花    


      第 2 9 回   ポ ピ ー と 白 桜 忌   (2017年6月1日)   

  4月、5月と2ヶ月にわたり、そよ風のアトリエではポピーについて触れて来ま

 した。今月で3ヶ月連続、そして最終回として再びポピーについてお話します。

  昨年、豊橋市の市民ふれあい農園(10坪)を借りることができました。80区

 画ありますが、ほとんどのお宅は野菜作りを行っています。でも、我が家はお

 花畑にしようというのが目的でした。コスモスに始まり、ヒマワリ、ムラサキ花菜

 菜の花、矢車草、昼咲き月見草等々、野菜畑の中でお花畑は実現しました。

  そうした花たちの一つが、ポピーでした。これまでは花屋さんで切り花として

 購入していましたが、秋風を感じる9月下旬に種を蒔いてみたのです。

  本当に「ケシツブ」と言われるのが実感できる小さな小さな種でした。芽が出

 るのか心配でしたが、2週間ほどで発芽しました。順調に成長し、冬を越して

 ゴールデンウィークに莟を付け出し、咲き出したのです。

  畑からは切り花にしたり、根っこごと引き抜いて鉢植えにして家に持ち帰り、

 絵のモデルになってもらいました。

  初めて種から育てたポピーですので、栽培方法などを調べているうちに、その知識もたくさん得ることができました。知っている

 ようで知らないことばかりです。たとえば、芥子とポピーは同じだと思っていたのですが、実は違うのです。芥子は有害なアヘンを

 採る花で栽培が禁止されています。ポピーはそうした麻薬の成分を含んでいない園芸品種で、当然栽培も許されています。その

 ポピーでよく知られているのがヒナゲシ、ナガミヒナゲシ、モンツキヒナゲシ、オリエンタルポピー、アイスランドポピーの5つです。

  ヒナゲシは虞美人草(ぐびじんそう)とも呼ばれ、八重咲きのものが多く、花びらが薄く華奢です。ナガミヒナゲシ(長実雛芥子)

 は、先月号でも記しましたが、ヒナゲシによく似た品種で繁殖力や生命力から、雑草のように各地に広がっています。

  畑でそしてベランダで5月一杯咲き続け、絵のモデルになってくれたポピーですが、そろそろ今年はお別れの時がせまってい

 るようです。今年も秋になったらあの小さな小さな種を蒔くことにします。そして5月にまた会えるのを楽しみにします。

  5月29日が情熱の歌人、与謝野晶子さんの命日で、白桜忌ということを知っていましたか?ポピーに関して彼女の歌を紹介

 して最後とします。ポピーのことをフランス語で「コクリコ」と言うそうです。夫、鉄幹を追ってフランスに渡った晶子がパリの野で

 一面に咲く真っ赤なポピーを見て詠んだ一首です。時は明治45年5月、晶子34歳でした。


     ああ皐月 仏蘭西(フランス)の野は 火の色す 君もコクリコ われもコクリコ

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