花を描く水彩画の教室を立ち上げて、随分の年月が経ちました。もともと花が好きで始めた水彩画でしたし、教室に集う
皆さんもまた花好きの面々でありますから、話題の中心は花、という誠に幸せな状況なわけです
スタートした頃に比べれば、知ることができた新たな花の名前も随分増えたはずなのですが、それでも町を歩いていて
「 あれは何?」 と思わず立ち止まって眺める花に出会います。
五年ほど前になるでしょうか、秋の終わる頃に背丈がおびただしく高いその先に、可憐な桃色の花をつける植物を見か
けて、新鮮な驚きを覚えました。
帰宅して手元の植物図鑑を繰っても載っていなくて、歯がゆい思いをしたものです。その後訪れた浜名湖ガーデンパー
クで再会し、それが皇帝ダリアと初めて知ることができました。何しろ背丈が尋常ではなくて、カメラに収めてみたものの
下から見上げた構図なので、プリントアウトした結果は推して知るべしです。
私は花を描くとき、先ずは左手にそれを持って前後左右から観察してスケッチを重ねた上で描く、というようにしていま
すので、残念ながら皇帝ダリアとは、大分距離のある関係が続いています。そんな折、花の栽培に熱心な生徒さんが、
自宅で咲いたという皇帝ダリアのスケッチを教室に持ってきて、 「 手直しをして欲しい 」 と言うのです。
心苦しいのですが、まだスケッチした経験のない花を描くアドバイスは、できないのだということを伝えると、その人は
こちらの気持ちを理解してくれて、皇帝ダリアの性質を幾つか教えてくれました。
すーっと伸びた茎は逞しそうに見えるけれど、中は空洞で台風のような強風にあおられると、すぐに折れることとか、
それでも先端を挿し木すれば、結構たやすく根付くという話など、知らないことばかりでした。さらに、来年花が咲いた
ら持ってきてあげる、と言われたときは 「 ありがとう 」と少し飛び上がりました。
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