風 誘 讃 花    


      第 2 1 回   野 ブ ド ウ の こ と   (2016年10月1日)   

   秋に実る果物といえば、真っ先に浮かぶのが葡萄。

   きれいで美味しくて、それはもう収穫の季節を満喫させ

  てくれるありがたい存在です。

   藤籠に盛ってよし、ガラス皿に置いてよし。青空を背に

  スケッチするのも素敵。勿論、食べたらほっぺが落ちそう

  な、そんな葡萄の季節ですが、食べられないけれど、美し

  さには、負けない野ブドウを紹介したいと思います。

   夏の間は、草ぼうぼうの茂みの中で、いわゆる雑草の

  体で他の草と絡み合っている野ブドウですが、秋の深ま

  りとともに、その直線的な蔓の先端に実をつけます。

   その色は、緑、青、青紫、赤紫、といったところですが、絵を描く人が開いてくれる「そよ風のアトリエ」

 であるならば、その色彩がターコイズブルー、コバルトブルー、コバルトバイオレットライト、キナクリドン

 バイオレット、コバルトグリーン、そこにちょっぴりインジコを混ぜて・・・・などと記述しても、許されるので

 はないでしょうか?

  何しろ多彩なのです。いわば宝石箱をひっくり返したような愛くるしい実であったなら、それが野ブドウ

 だと思ってくださいね。

  でも、その美しさを描こうと一枝持ち帰ってみても、程なくそれらは褐色に変わってしまうのが常ですが

 心の中に大切に収めた記憶をたどりながら、毎年描いているのです。

  今年も野ブドウを探して郊外の雑木林を散策していたら、その野ブドウに絡みつくようにして、青紫の

 実をつけた植物がありました。今まで気にもとめなかった草が、目に入ってくるのもこの季節ならでは。

 一枝持ち帰って植物図鑑で調べたら、「イシミカワ」 でした。

  茎に下向きの鋭い刺が生えているので、先端の色づいた実だけ持ち帰りました。直径が2〜3ミリの

 小さい小さいその実は、白い絵の具皿に収まって、絵のモデルを務めてくれたのでした。

  この季節、春とはまたひと味違う色彩が迎えてくれる自然林に、あなたも足を運んでみませんか。

イシミカワの実

風誘讃歌へ
そよ風の小径一覧
そよ風の小径パート2一覧
トップページへ戻る