風 誘 讃 花    


    第 11 回  紅葉(こうよう、もみじ)のこと、あれこれ   

                                            (2015年12月1日)   

  季節柄、紅葉(コウヨウ、モミジ)を描いています。花の水彩画教室でも、お手本として登場してもらうことにしました。花の

 ような華やかさはないけれど、それとはまた違う美しさがあって、どうしても描いてみたい素材ではあります。

  用意したのは別図のようなお手本だったのですが、生徒さんの中からカエデとモミジの違いはなんですか?という質問が

 出されて、はた と考えました。そういえば、よく理解しないままに、もみじ狩りとか、今年の紅葉の色づきはいまいちですね、

 とかいう話題を口にしていたことでした。

  それで調べてみたのですが、辞書などに頼った学習では、紅葉(モミジ)というのは秋に木の葉が赤や黄色に色づくこと

 であり、黄色く色づくのを黄葉というふうに区別して表現しているらしいのです。

  大昔、一般に奈良時代、その前後を含めた時期を上代と呼んで、その頃は黄葉、平安時代以後紅葉と書く例が多いと

 のこと。

  それに対して、カエデは葉の形が蛙の手に似ていることから呼ばれるようになったそうで、お手本の絵はイロハカエデ

 というのが正解ということになりました。もっともさまざまな写真集や絵本などで、イロハモミジと紹介されていることも多い

 ので、まあ、そのへんは良しとしましょうか。

教室のお手本、イロハカエデ

  もみじ狩りは平安貴族たちの密かなブームだった、という記事もありまして、万葉の人々は秋になって色づく葉をまとめ

 てモミジと呼んでいましたが、次第にひときわ赤くて目立つイロハモミジの仲間のことだけを、モミジと呼ぶようになったと

 記された読み物もありました。

  いずれにしても、神代の昔から人々は、紅葉の季節を愛でてきたのだなぁ・・・・と考えたら、文部省唱歌の紅葉を口ず

 さみたくなりました。


    秋の夕日に 照る山紅葉(ヤマモミジ)                 渓(タニ)の流れに 散り浮く紅葉(モミジ)

    濃いも薄いも 数ある中に                        波にゆられて 離れて寄って

    松をいろどる 楓(カエデ)や蔦(ツタ)は                赤や黄色の 色様々に

    山のふもとの 裾模様(スソモヨウ)                   水の上にも 織る錦


  なんという完璧な詞であることか、としばし感動の嵐に見舞われました。小学生の頃、先生のピアノ伴奏に合わせて、

 大声で歌っていた頃には想像できなかったリアルな世界が凝縮されていて、文字を追うだけで山あいの紅葉をいきいき

 と思い描くことが出来るのでした。

  高野辰之作詞、岡野貞一作曲というこの歌に敬意を表しつつ、私なりの紅葉を描いてみました。

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