風 誘 讃 花    


    第 10 回  ド ビュ ッ シ ー  雪 は 踊 っ て い る   
                                            
                                                 (2015年11月1日)   

  今回の「四季を巡る花とメロディ コンサート」では、曲目に添えてプロジェクターで私の水彩画を壁面に映し出すという方式が

 採られました。そのために、私も比較的早い時期から準備に取りかかりました。

  春のすみれ、さくら。夏はショパンの雨だれをイメージして紫陽花。秋はヴァイオリンによる童謡歌が用意されたのに合わせて

 赤とんぼ、イロハカエデ、夕焼け空など。冬はチャイコフスキーの花のワルツで、クリスマスのイメージとともに花がいっぱい咲い

 ている、という雰囲気を出せばOKと自分なりに考えて、日常的に描いている水彩画の集大成でいける、と思っていたのです。

  ところが本番数日前になって、編集をしていたマネージャーから、「雪は踊っている」に使う絵が無いことを指摘されてしまいま

 した。そう言われてみればその通りで、ドビュッシーのCDを聴きながら、急遽雪が降り積もる情景を想像する態勢に入りました。

  冷静に考えれば、ずっと前から決まっていたことなのに、なぜ今になってあたふたと・・という反省しきりです。でも、絵筆を取っ

 ていざ創作を始めてみると、しんしんと降り積もる雪景色がくっきりと浮かんでくるのでした。

  それもそのはずで、私は雪国に生まれ育ったのでした。今まで雪景色の絵を描かなかったわけは、ただ忘れていたというそれ

 だけだったことに気がつきました。

 結婚してからは、夫の転勤に伴って随分いろいろな地方へ行きました。それが大阪や鹿児島といった温暖な土地ばかりで、

雪景色を見るためにわざわざ旅をすることはあれど、降りしきる雪の中に佇むなどということは、ついぞご無沙汰できてしまい

ました。

 幼児体験はこんなにもリアルに体の奥深く潜んでいるものなのでしょうか。思い出の中にある裏山の杉林や、平地の田んぼ

一面に降りしきる雪景色をたどっていたら、なんだかあっという間にF6サイズの絵が何枚も出来上がっていたのでした。

 でも皆さん、こんなことはめったに経験できることではないんですよ。作品展にしてもホームページ更新の場合もたいていは

思い通りにいかなくてうんうん唸りながら仕上げているのですからね。

 今回のことは、不器用な私を見兼ねて天国から絵描きのお祖父ちゃんが力添えしてくれたんだな、と解釈しているところで

あります。

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