そ よ 風 の 小 径  パート2

第 3 9 回  パ ン ジ ー の こ と (2014年 2月 1日)

   そよ風のアトリエ2月号は、パンジー特集といってもいいでしょう。

   楽しめる期間も長く、種類も多様なこの花にまつわるエピソードなどもお伝えしてゆきたいと思います。北ヨーロッパ原産

  のこの花が日本に伝わったのは、19世紀半ばのこと。その後間もなく日本人は明治維新を経験して、西洋文化の吸収に

  熱中し始めます。

  西洋の技術や思想だけでなく、芸術や文芸、生活スタイルにも憧れ

て、それを模倣吸収しようとしたのでした。

 華やかなパンジー、それと同じ頃にお目見えしたニオイスミレは、舶

来の象徴として人々の心をとらえ、当時流行した絵はがきの図柄や

書物の挿絵にも数多く描かれるようになりました。

   《 スミレの花咲く頃  初めて君を知りぬ 》

宝塚で上演された歌劇 {パリゼット} で歌われたこの歌が熱狂的に

  受け入れられたのも、遠い西洋から渡ってきたニオイスミレへの憧れを掻き立てたからかも知れない、とある評論家は述べ

 ています。

  今、花屋さんの店頭には種類もさまざまなパンジーが所狭しと並んでいて、どれを選ぼうかと悩んでしまいます。それもその筈

 で、日本に渡来したパンジーはカラフルで華やかな美しさ故に、たちまち日本人を魅了して、東京江戸川区の下町、鹿骨には

 多くのパンジー農家が誕生。こと第二次世界大戦以降本格的に改良が進められて、日本は現在、世界有数のパンジー生産国

 になったのだそうです。おかげで私達は毎年のように、見た目も新たなパンジーを手に入れることができるというわけです。

  さて、パンジーという名前の由来についてですが、物思いにふける人のように見えることからフランス語の {思い} を意味す

 るパンセが変化してそのような呼び名になったという説があります。そのほかに三色スミレ、遊蝶花、胡蝶草など。

  三色スミレの呼び名はその通りの青、黄、白の三色からなる花という意味がありますし、呼び名に蝶という漢字が使われて

 いるのは、描いてみてしごく納得がゆくのです。それは花びらの模様が紋白蝶などの羽に見られるそれととても良く似ているか

 らなのでしょう。パンジーを描きながらふと、この花はあるときチョウチョになって画面から飛び出してくるのではないかしら、と

 いう錯覚に陥ることがあります。

  いずれにしても秋の半ば頃から店頭に並び、翌年の初夏まで私達の周りを彩ってくれるパンジーを今年はどんなふうに描

 こうかと楽しみにしています。

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