そ よ 風 の 小 径  パート2

第 3 2 回  バ ラ に ま つ わ る お 話 し  (2013年 7月 1日)

   バラの歴史は、7千万年にさかのぼると言われています。花を愛でる人は多いけれど、なかでもバラは格別に人気のある花

  といっても過言ではないでしょう。当然のことながら、さまざまなエピソードがあるわけです。しかも眩いばかりに煌びやかな・・・。
   
   たとえば18世紀半ばのフランス。バラはロココ様式のシンボルであり、ベルサイユ宮殿の貴婦人とともに、その華麗さを競っ

  た花でした。あの池田理代子さんの漫画のおかげで、私も部分的にちょっぴり詳しいのです。

   その頃、ルイ15世の寵愛を受けたポンバドゥール婦人は、ドレスのすそをお気に入りの薄紅のバラで飾り、ルイ16世の王妃

  マリーアントワネットは、ベルサイユ宮殿の寝室用にと、ピンクのバラのブーケを一面に織りだした絹地を注文したのでした。
      

   でも、やはり一番お伝えしたいバラにまつわるお話しは、花のラファエロ

  と称されたルドゥーテです。

   1759年、ベルギーに生まれた画家ピエール・ジョゼフ・ルドゥーテ。彼

  こそは、ボタニカルアートの傑作 「バラ図譜」 を完成させた人物だったの

  ですが、この偉業にはフランス革命の後に新時代を迎えたフランスに登

  場した新しい貴婦人、ナポレオン ボナパルトの妻、ジョゼフィーヌが関わ

  ってくるのですから、わくわくしてしまいます。

   彼女は、権力を手中にした夫の財力を後ろ盾に、パリ郊外に建つマル

  メゾンの館に壮大なバラ園を作ったとされています。そして世界各地に

  人を派遣し、珍しい品種のバラを収集。庭園には3万本にも及ぶバラが

  植えられたとも伝えられます。

  ジョゼフィーヌは、この花園に咲く全てのバラを記録することを、ルドゥーテに依頼するも、その完成を待たずに他界します。

  その後、ルドゥーテの 「バラ図譜」 は、全3巻が七年間にわたって刊行されたそうです。今では折に触れて見ることのできる

彼の見事なボタニカルアートですが、そのようなエピソードに彩られていたことを知ると、より一層の親しみを覚えるのです。

 これからも、バラにまつわる新たなお話しが生まれては、語り継がれていくだろうということを想像しながら、わが花の水彩画

教室も、たくさんたくさんのバラを今年も描きたいと思います。


   ※  現在、松坂屋名古屋支店南館8階 マツザカヤホールにて 「ルドゥーテのバラ図譜」 展が開催されています。

      7月10日(水)まで

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