そ よ 風 の 小 径  パート2

第30回  花 水 木  (2013年 5月 1日)

   今年は桜の開花が予想以上に早かったようです。例年の開花時期を参考に、お花見は何日と定めていたところが、実際には

  その頃には散ってしまっていたという嘆きの声が、あちこちから聞こえてくるようです。

   日本人の桜への思いは特別のものがあるので、いずれにしても散り果てたときの虚しさは、どうすることもできないものがあり

  ます。でも心にぽっかり空いた虚脱感を拭い去ってくれるのもまた花であるように思われるのです。  

  今年は作品展の準備やらなにやらで、桜は車窓の風景の中でしか

楽しめなかったなあ、と感慨にふけっていたとき、街路樹に白い花が

ぽつりぽつりと咲き出しているのを見つけました。

 それは桜の華やかさが終わるのを静かに待っていた花水木でした。

 よく見ると深紅色をしたものや、淡いぼかしの入ったものなど、さま

ざまな色合いの花を付けているのです。

 大急ぎでスケッチブックを取りだして、鉛筆を走らせながら、今度の

水彩画教室のお手本は花水木にしようと決めたのでした。

                      花水木一口メモ

 原産地は北アメリカ東部。明治の末に当時の東京市長、尾崎行雄氏が桜をワシントン市に贈った返礼として贈られたの

だそうです。今では街路樹としてあちこちで見かけるようになりました。

 花びらのように見えるのは、実は苞(ほう)と呼ばれる葉の一部で、中心にある芯のようなところが花なのだそうですよ。

この花の美しい呼び名はさまざまなところでも使われていて、聞くところによると今夏の世界選手権(モスクワ)でマラソン

代表に決まった野口みずき選手の名も、この花からつけられたそうです。その他、愛知県の長久手市には{はなみずき

通駅}があるそうですし、三重県の長島温泉に{ホテル花水木}という名のホテルがあることは、テレビのコマーシャルで

ご存じの通りです。

 そういえば、一青窈のシングル曲にも印象的な{ハナミズキ}がありましたね。

 やはりそれだけ皆に愛されている花なのでしょう。

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