そ よ 風 の 小 径  パート2

第28回  メ ジ ロ と つ き あ う  (2013年 3月 1日)

   以前から小鳥を描いてみたいと思っていました。公園でスケッチしていると、なにげなく聴こえてくるのが、鳥の囀りです。

  そんな鳥の声をBGMにして鉛筆を走らせるのは、楽しいものです。まして目の前をセキレイがツツーと走って横切ったりす

  ると、見惚れてその行き先を目で追い掛けたりしています。そうこうするうちに、小鳥を花の絵のどこかに登場させることは

  できないものかと考えるようになりました。

   参考書などを買い込んでみたものの、実践には程遠く、ただ眺めるだけで、本棚の飾りとなっていました。私が描きたい

 鳥のNo1は、メジロです。山茶花が咲く頃になると、盛んに住宅街を飛び回り、時にはベランダの花の蜜を吸いにやってき

 ます。ウグイス色の綺麗な姿をもっとゆっくり見たいと思うのですが、小さいだけに天敵を恐れるのでしょうか。それはそれ

 は素早い仕草で目的を果たすと飛び去ってゆくので、鑑賞するゆとりはありません。

  今年は1月の末頃から大きく伸びた菜の花の密を吸いに、つがいで

 訪れるようになりました。その姿をカーテン越しに眺めるうちに,再び

 { 小鳥を描きたい! }思いが募り、先ずは鳥を描くための参考書を

 開いてみることにしました。何事においても、その道のスペシャリスト

 の教えに耳を傾けることは、大事なことですからね。

  で、その本の著者はこう言うのです。

 「鳥を描きたいのなら、まず卵形を描く練習をしましょう」と。子供は、

 点や殴り描きをするうちに、偶然○が描けるようになって、はじめて

絵を意識すると言います。鳥を描くときには、○を卵の形に置き換えて、鳥を思い浮かべて描いてみようと。

 その言葉を信じて卵のスケッチを始めたのは、言うまでもありません。心なしか食卓にのぼる卵料理も増えたように思います。

 こんなに臆病な小鳥がベランダにしばし留まって、スケッチのモデルになってくれるとは、思えなかったけれど、とにかく思い

ついたことの努力は惜しむまいと、ある時蜜柑の切れ端を鉢植えの端に置いてみました。驚いたことには、彼らは素早く見つ

けて夢中でついばみ始めたのです。それもかなりの長時間をです。きっと自然界の餌が少なくなってきた頃なのでしょう。

 これなら餌付けに成功するかも知れないという望みを託して、ベランダの手すりにあつらえた葡萄棚(冬の間は葉が落ちて

蔓だけになっている)のあちらこちらに半分にカットした蜜柑を刺して待ちました。

 程なく、つがいが飛んで来て仲良くひとつの蜜柑の切れ端をついばみ始めたときには、思わず心の中で拍手したくらいです。

でも実際に手を叩いたりしたら警戒心が強いので、飛び去ってしまうのは目に見えていますから、我慢我慢。

 さて、メジロの観察をしながら気がついたことが幾つかありました。きわめて警戒心が強いと思っていたのは、実は最初だけで

満腹になったつがいは陽なたぼっこを楽しみ、ときに寄り添って毛づくろいなど始めたのです。その様子はいかにもほのぼのと

しているのですが、そんな仲良し夫婦ばかりではなく、相手がついばみ始めた蜜柑をことごとく横取りするカップルもいて、喧嘩

中なのかな?と興味深く観察したことでした。

 いずれにしても一日の間には何組かのつがいがやって来て食事していくので、さらに観察を続けていれば、もっと面白いレポー

トができるかもしれませんので、お楽しみに。

 「面白そうだから私も餌付けをやってみました」

 なんていうお知らせをいただければ嬉しいかも。なにはともあれこの春は、生き生きとしたメジロを花の絵の中に登場させら

れるように励むことが、当面の目標です。

 水彩画教室の皆さんにおかれましては、小鳥のお手本が用意されるときを楽しみにお待ちくださいね。


         メ ジ ロ と つ き あ う   パート2

  こんなに早くメジロレポートを再度書き込むことになるとは思いませんでした。

  たかだか2〜3日の観察で、ずいぶんいろいろな発見があったんです。先ずはその縄張り争いの熾烈さから。

  最初のうちは、どれもつがいでやって来ると思っていたのですが、中に1羽、独身のメジロがいまして、つがいが

 飛び去るのと一匹狼ならぬ一匹メジロがやって来るのとがほぼ同時でした。うまい具合に譲り合っているのだろう

 ぐらいに考えていたら、今日の午前、なにやら猛々しいメジロの鳴き声が何度かおこり、気がついたらベランダに

 やって来るのは一匹メジロだけになっていました。しかも常時居座る様子は、この場所の主さながらです。メジロ

 はか弱くてヒヨドリから守ってあげるものという今までの概念は、怪しいことになりました。

  調べたところでは、メジロは縄張り争いが熾烈な性質を持っているとか。野生の逞しさを教えてもらったうえに

 縄張りを守って動かないメジロをたっぷりとスケッチさせてもらったことは、特筆すべきことでした。

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