そ よ 風 の 小 径  パート2

第18回  魔法のプランター  (2012年 5月 1日)

     我が家のベランダにはたくさんの鉢植えがあって、四季を通じて絵のモデルになってくれていることは、既に

    紹介済みですが、その中に特別優秀なプランターが一つあることを、今回はお話ししたいと思います。

     長さ50センチ、横幅20センチほど、深さが20センチあるかどうかという、ごく普通の鉢なのですが、そこに

    今、ムラサキハナナの紫とタンポポの黄、それに赤紫に近いピンクのスミレが同居して、この世の春を謳歌し

    ているところです。

     じつはこの花々はベランダで育てたくて長年努力してきたものでしたが、その効も虚しく鉢植えではなかなか

    育たない花の代表格だったのです。それがどうしたことか、今年は野にある花のままにのびのび育ってくれま

    した。しかもタンポポにいたっては、夫がタンポポ綿毛を摘んできてそっと播いておいたら、芽が出て成長した

    というのですから、これはもう驚きです。

  タンポポごときで何を大げさな・・・とおっしゃいますな。

 こういう野の花をベランダで育てるのは、なかなか難しい

 ことなのです。

  もっとも同じ野の花でも場所を選ばず、元気なものも中

 にはありまして、ツユクサなどはその代表格です。夏の朝

 早く咲き出して午後には萎む水色の可憐な花は、その姿

 からは想像できないくらい、たくましい生命力を持ってい
 
 ます。いったん根付くと種をまき散らし、翌年至る所から

 新芽を伸ばします。

  放っておくとどの鉢もツユクサでいっぱいになってしまう勢いなので、間引きをするしかありません。

  そんなふうにタンポポやスミレも育って欲しいのですが、どうしても巧くいかないのでした。ベランダで栽培するの

 は無理と諦めていた時に、この春憧れの花々の饗宴をこの目で見ることができたのですから、喜びもひとしおです。

  でも、よく考えてみるとこれにはちゃんとしたわけがあったようなのです。実は2年前に定年退職した夫がさまざま

 な家事を分担してくれるようになり、そのひとつにベランダの花の手入れがありました。

  38年間トンネル建設の現場で勤めあげたスキルを持ってする夫の家事には、計画性と能率が組み込まれてい

 て、長年専業主婦に携わってきた私が 「うん、それはいいアイデアね」 と感心することがいろいろありました。

  おそらくは、今回の快挙も合理的かつ緻密な工夫の賜だったのでしょう。でも負けず嫌いの私は

  「これは魔法のプランターのおかげだ!」 と言い続けているのです。

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