そ よ 風 の 小 径  パート2

第13回  夕 焼 け  (2011年 12月 1日)

   夕焼けにまつわるエピソードと言えば、どなたの心の中にもきっと幾つか転がっているのではないでしょうか。

   一日が暮れようとしている、そんな時間帯に西の空が時には鮮やかな茜色に染まって、或いは穏やかな桃色が刷毛で描い

  たように広がって、この日の疲れを労ってくれているようです。そんな夕焼けに出会った日は、なんだか得をしたような気分に

  させられるものですが、気がつけば最近、綺麗な夕焼けにとんとお目にかかっていません。それで記憶を辿って白い画紙の

  上に、いつか見た夕焼け空を再現してみました。
 自己満足に値する仕上がりだったので、水彩画教室に持参して最近夕焼

  けを見た人いますか?という質問をしたところ、なんと毎日見ているという人に出会ってしまいました。

   なんでも自宅から夕焼けがたっぷり見られる場所にお住まいとのことで、あまりにも綺麗なので家族を誘って一緒に

  見たいのだけれど、誰も付き合ってくれないので一人で見ているのだと、話してくれました。
  そういえば、息子が小学生だった頃、外遊びから帰宅した

 途端に私の手を取って 「ママ、夕焼けが綺麗だよ、早く早く!」

 と言って無理矢理外に引っ張り出されたことを思い出しました。

 奴も今は親から独立して一人暮らしをしています。便りの無い

 のは、元気でやっているからと、納得している昨今ですが、時

 には突然帰ってきて、(最近彼は新車を購入したものですから)
 
  「おふくろ、伊良湖岬の夕焼けが綺麗だからドライブがてら、

 ちょっと行ってみようぜ」なーんて言ってびっくりさせてくれない

 かしら、そんなことを夢見てしまった初冬の夕暮れでした。

リ ュ ウ ノ ウ ギ ク (竜 脳 菊 )

   野紺菊のスケッチに飽きて、野の花の写真集をめくっていたら、野菊にも似たおおぶりの花を見つけました。まだ、

 見たことのない花だと思って解説を読むと、どうやら平地ではなかなかお目にかかれない植物のようです。

 { 葉をもむと揮発性のよい香りがあり、これを竜脳香に例えて名が付いた。日当たりのよい山野に生える

   が、岩場や乾燥気味の場所を好む傾向があり、岩場から垂れ下がって咲く姿もよく見かける。

   花の直径は4センチほどあり、盛りを過ぎたものや霜にあたった株などは花びらが紅色を帯びてくる }

  写真で見るその花のようすがとても良かったので、そのまま絵にしてみることにしました。白い花を描く時は、マスケ

  ットインクを使うのですが、野菊を大きくしたような感じで、全体像が出来上がりました。さて、色づけという段階で、

  むくむくと想像力が頭をもたげてきました

 解説によれば、霜にあたった株は、花びらが

紅を帯びるというではありませんか。小高い山

の岩場から垂れ下がっている竜脳菊は、さぞ

美しいことだろうなあ・・・そんな思いを巡らせな

がら描いたら、こんな絵が仕上がりました。

 「本当の竜脳菊はこんなものじゃない!」と、お

叱りの声があるかも知れませんが、そこはどうか

一人の夢見がちな絵描きの心の中に咲いた花と

とらえて、楽しんでいただければ幸いです。

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