そ よ 風 の 小 径  パート2

第10回  木  槿  (2011年 9月 1日)

   梅雨明け頃から咲き始め、秋風が立つまで咲き続ける木槿は、まさに夏の花です。夏に弱い私にとって、この季節は

  忍の一字の趣がありますが、木槿や芙蓉、朝顔のような一日花に励まされて、絵筆をとるのはいいものです。

   早朝に起きて、スケッチに出掛けた日々もありましたが、齢を経てそれがおっくうになり、何とか花を身近に置いて絵

  のモデルになってもらうことは出来ないものかと考えました。木槿は一日花のため、切り花としては売られていませんが

  鉢花として店頭に並びます。紅色の美しい花をつけた鉢を買ってきてベランダに置いたのは、昨年のことでした。一回り

  大きい鉢に植え替えてこの夏を待ったところ、順調に育って枝先に次々と新しい莟をつけては、

  「きれいでしょう、ひとつ描いてごらん」 と誘ってきます。

  おかげで元気印の木槿を一輪描くことが出来ました。さあ、

 この花をどこに飾りましょうかと考えた時、病を得て入院して

 いる身内の顔が浮かびました。

  絵に描いた花は、散ることなく朝毎にベッドに横たわる人に

 語りかけてくれるでしょう。そして自然界の木槿が咲き終わる

 頃には、その人の病も癒えて共に外出できるのではないかし

 ら、そんな願いを込めて出来上がった絵を小さな額に収めま

 した。明日、この絵を携えて病室を訪ねようと思います。

 木槿は一日花ゆえに、そのはかなさから{デリケートな美}という花言葉があるそうです。反面、散っては咲き、咲いては

散る生命力の強さが愛されて、韓国の国民花とされているとも聞いています。

 花が絶えず入れ替わって咲き続けるところから、花言葉のひとつには、{いつも新しい美}というのもあるようです。

 なにはともあれ、我が家の木槿はまだまだたくさんの花を咲かせ続けてくれそうです。

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