そ よ 風 の 小 径  パート2

第9回  カタツムリの夢  (2011年 7月 24日)

   「 夏 眠 」・・・・・生物が乾燥高温の夏に休眠状態に入ること

  前回お話ししたカタツムリのこと、覚えていますか?

  何度かスケッチする機会に恵まれて、首尾よく紫陽花の絵に登場してもらうことができました。だったら最初の約束通り

 元の場所へ逃がしてやるのが筋というものですが、これが思いがけぬ事態に遭遇し、今も手元にいるのです。何故か?

 それはカタツムリが冬眠ならぬ、夏眠状態に入ってしまったからなのです。そもそも夏眠などという言葉があることも知ら

 ない私でした。

  それが数週間前にスケッチに出掛けた場所で、眉目端麗な

 カタツムリに出会ったのが縁で、ほんの少しの時間をご一緒する

 つもりでティッシュペーパーに包んで家に持ち帰りました。それで

 珍しい生物の生態を知ることになりました。

  家には使わなくなった鳥かごと紫陽花の鉢植えがあったので、

 それをカタツムリの住み家として提供し、時々霧吹きなどで水分

 を補給してやることで、それなりに快適な環境を提供していたつ

 もりでした。

 しかるに彼( 彼女?)は何が不満なのか殻に閉じこもったきりになってしまったのです。

  この場合どう対処すればいいものか、といろいろ調べた末に行き着いた答えが、夏眠に入ったらしいということでした。

 そういえば、日本列島が猛暑に包まれた時期と重なっています。そうなると人もこの時期には休眠できたらいいなぁ・・と

 妙な憧れも生まれてきます。

  いずれにしても頭部の触角を勇ましく振り上げて動くさまには、当分お目にかかれそうもなく、さりとて夏眠中の生物を

 天敵だらけの自然界に放り出すような不人情もできないので、いずれ眠りから覚めて再び活発に動き始めるまで保護

 することに相成りました。

  というわけで、あのカタツムリは、今日も紫陽花の葉陰でスヤスヤと夏眠しています。

  一体、どんな夢を見ているのでしょうね。

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