そ よ 風 の 小 径  パート2

第2回  ど根性リンゴのこと  (2010年 12月 26日)

  毎年12月の声を聞くと楽しみに待つ宅配便があります。

  それはふるさと信州から送られてくるリンゴです。私のふるさと佐久市望月地域は、市内有数のリンゴの産地です。

 その土地に住む兄が、りんご園を営んでいる友人を介して段ボール一箱分を送ってくれるのです。果実は小振りです

 が、ぎゅっと締まった実と蜜がたっぷりのリンゴは、他のお店ではなかなか手に入らない愛着の一品です。

  今年はいつもより遅い時期に届いたので {おや?} と思ったのですが、段ボールを開いてもっと驚いてしまいました。

 ずいぶん傷が目立つのです。 

  「いったいどうしたのかな?」 といぶかしがっていると、A4サイズの印刷物が目に止まりました。11月9日付の信濃

 毎日新聞の記事が添付されています。その説明によると、佐久地方に7月の初め広範囲に渡って直径1センチ大の

ひょうが降り、望月地域ではリンゴ畑約18ヘクタールが被害

を受けたというのです。

 兄の友人のリンゴ園もほぼ全滅の状態だったとか。

 今でも、東北地方の農家が、台風一過の果樹園で途方に

くれている様子などがテレビで映される度に、これからどうす

るのだろう、と危惧したものでしたが・・・・

 信濃毎日新聞の記事によると、市職員などで作る望月農業  

 技術者連絡協議会と農家が 「収入につなげられないか」 と被害直後から検討した結果、傷の少ないものを {ど根性

 リンゴ} と名付けて売り出すことに決めたのだそうです。

  ひょうに当たって傷つき、落下してしまったリンゴも沢山あるなかで、最後まで頑張って実った根性豊かなリンゴとい

 う意味で名付けられたのだと知れば、あちこちについた傷のわけも納得できます。そうなると愛情さえ湧いてくるので

 すから、不思議です。

  「来年は、また美味しい実がなりますように」

  そんなことを願いながら、ふるさとから届いたリンゴをまじまじと眺めてみました。

  今年のリンゴは、お裾分けするわけにはいかないですが、セザンヌの絵のように竹の籠に盛って素敵な部屋の飾り

 にしてみましょう。そのうちに絵心が動いて、いつにない静物画が完成するかもしれませんからね。

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