エ ッ セ イ の 部 屋  ( 2 0 0 4 年 9 月 )

第 2 4 回 ・・・ ぶ ど う

  前回(8月)、私は西瓜が大好きでこれを食べて暑さを乗り超えている、というようなことを紹介しましたところ、

何人かの方から 「そんなに好きなんですね!!」

という内容のメールが届きました。多少誤解を受けるような紹介をしたようですので、申し添えたいと思います。

 私は食いしん坊で、特に果物といえば、「好き!」か「大好き!!」のどちらかしかないのです。西瓜の次には

梨を、梨の次にはイチジクを・・といった具合に季節の恵を楽しみながら創作にも使わせてもらっています。

  そんな私にとって最近気になり始めたのが葡萄です。美しい色のマスカットや甲州葡萄が店頭に並び始めると、

「今年はどんな風に描こうかしら」

と心が弾みます。いわばお店で洋服を選ぶような気持ちでパレット上に絵の具を並べてゆくのです。

 葡萄という素材は水彩画のモデルに向いています。それでこの季節になると何枚も葡萄の絵を描きます。店頭に

並んでいるものの中から特に見栄えのするものを選りすぐって買ってくるのですが、今年は初夏に購入した鉢植え

の葡萄がいろいろなイメージを投げかけてくれます。

 蔓をあちこちに伸ばしながら生長している鉢植えの葡萄をスケッチしながらふと思い出したのは故郷の家の庭先

で栽培していた葡萄棚です。実りの季節を迎えるとかぐわしい香りを辺り一面に漂わせるのですが、味の方はいま

いちで、さすがの食いしん坊の私でさえ手を出すのを差し控えるような代物で、蜂がごちそうになりに訪れるぐらい

のものでした。それでも秋に向けて葡萄の実が少しずつ色づいてゆくのを見るのは楽しいものでした。そんな自然

との関わりの中から私の絵心も育まれていったのでしょう。幼い日に美しいと感じたものを今、やり残した宿題を仕

上げるような気持ちで描き続けています。 
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