新エッセイの部屋

 第 6 回 ・・・ 向 日 葵 ( ひ ま わ り)

  真夏の太陽と向き合うように咲く向日葵は、観る人によってそのイメージがずいぶん違うようです。ソフィア・ローレンが

 演じて好評を博した映画「ひまわり」は、別れの哀しみをこの花に託して私たちの心に忘れ得ぬ感動を植え付けました。

  炎の人、ゴッホにとってこの花は、そのまま炎となって作品の中で今でも強烈なメッセージを送り続けます。
 
  強烈な印象の強いこの花を私は敢えて幼子の傍らに寄り添わせてみました。  

太陽の下では本当に元気な花ですが、切り花で購入すると

ほんの3日ぐらいしか持たないので、絵のモデルになって

もらうのが、大変です。

それに、主調色の黄色は、明度差が付けにくいので反対色

の紫や赤茶などを使ってコントラストを強め、メリハリの効い

た陰影を付けて仕上げます。日本には江戸時代の初期に

ヨーロッパから中国を経て伝わったという向日葵も、今では

夏の庭先に欠かせない花の一つとなっています。

向日葵というともう一つ思い出されるのは、ミスターベース

ボール、長嶋茂雄さんです。

 先日、リハビリ中ながら東京ドームの巨人戦観戦にお見えになり、久しぶりに長嶋さんの笑顔を見ることができました。
 
 長嶋さんを向日葵に例えたのは、「生涯一捕手」としてパリーグを中心に活躍なされた野村克也さんです。自分をひっそり

とした夜に咲く月見草に例え、その対極として真夏の明るい陽射しの中で元気に花開く向日葵を長嶋さんとしたのです。

 言われてみれば、長嶋さんの明るさ、元気さ、派手さ、そして力強さ、向日葵のイメージと本当に良く合っているものと思い

ます。夏を代表する花、向日葵、長嶋さんがそうであるように多くの人々に好かれる要素はたくさんあります。そして、野村

さんが自分を例えた月見草にしても、この花が大好きな人も数知れずいるものです。かの文豪、太宰治に日本一の山、

富士山には月見草がよく似合うと言わせています。

 どんな花にもその魅力と個性、すなわち存在価値はあるのです。花たちは精一杯自分を主張しています。その魅力を素直

にそのまま表現できたらこんなに嬉しいことはありません。そのために今日も花たちと向き合っています。

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