新エッセイの部屋

 第 10 回(H17.12) ・・・ 初雪、メジロ、楓歌

 豊橋では12月13日に初雪が舞いました。

 その日は朝から凍てついていたし、テレビのニュースでは大雪に見舞われている地方の映像が次々と紹介されていた

のでそのうちには降り出すだろうと予想していました。昼を過ぎてもう降り出しても良さそうなものだけれど・・・と空を見上

げていたら、やってきました。初めはごく遠慮がちに、そのうちに見事な牡丹雪になって。    

子供の頃は嬉しさの余り、戸外に出て大きな口を

開けて受けとめたものだけれど、さすがに今となっ

ては同じリアクションはできません。

それで描きかけの山茶花の絵の中に入れてみた

わけです。

    「 雪、ようこそ! 」

という思いを込めて。

  山茶花の咲く頃になると、心待ちにするのは「チ、チ、チ」

 という鳴き声とともにやってくるメジロです。

  豊橋駅に近い高層マンションのベランダにも、時折顔を

 覗かせてくれる可愛らしい姿。花の蜜が目的なのだけれ

 ど、私は私で何とかしてその姿を絵にしてみたいものだ

 から、レースのカーテン越しにそっと忍び寄る。スケッチ

 ブックを構えて鉛筆を走らせようとする間もなく、彼らは

 どこかに翔び去ってゆくのでした。

  そんなわけで、ここに描いた小鳥はメジロと呼んで良い

 ものかどうかも分からないイメージなのでありますが、その

 愛らしさだけでも伝えられれば幸いです。

  楓の歌、と書いて{ ふうか } つい最近2才の誕生日を迎えた孫の名前です。この子の親である娘夫婦は同じ豊橋市内に住ん

 でいるので、会う機会も多くその成長を楽しませてもらっています。

  名前の中に楓(かえで)という文字があるからでしょうか、楓の絵を描いていたらその中で楓歌を遊ばせてみたくなってしまいま

 した。豊かな自然の中で思い切り体を動かして遊ぶといいよ、そう願いながらも実際には躊躇してしまうのはこの頃のご時勢でし

 ょうか。広島で悲しい事件が起きてようやく犯人が捕まったかと思う間もなく、茨城での幼い少女の事件が報道されました。

  怖かったろうね、辛かったろうね、と悲劇の当事者に語りかけながら、その子の周りにいるもっと多くの人たち。両親をはじめ

 として祖父母、兄弟、お友達、先生・・・。どれほど多くの人々がその死を悼み、どうしようもない怒りを抱いていることでしょう。

  テレビで理不尽な事件が報道されるたびに、そのことを思い心が震えます。こんな小さくて柔らかくて純真な子供を乱暴に扱っ

 たりしたら駄目じゃない!などという言葉は犯罪を犯す人には届くはずもないけれど・・・・。

  それでも私にできることがあるとしたら・・・、それは子供がどれほどいとおしい存在であるかを絵でもって表現していくことかも

 しれない。これから枝を伸ばして大きく成長してゆく筈の柔らかな若芽を、大切に保護し見守ってゆくのが私たち大人の使命な

 のですから。

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