新エッセイの部屋

 第 9 回(H17.11) ・・・ 秋の美しさ

 今年も紅葉の季節が巡ってきました。
 
この時期を迎えていつも思うことは、余りに美しい世界を目の前にしたら、ただ見惚れることしかできないなぁ・・・ということです。

無力と言えば無力でありますが、今年もまたこの美しい時を迎えることのできた喜びを、少しでも水彩画に留めたいと思って、

スケッチブック片手に外に出かけるのです。    

紅葉がとりわけ美しいと感じるのは秋の透明な陽射しを

浴びて輝くように揺れているとき。そんなときはもう、作品

にしようなどという考えはやめて、ただ豊かな時間に身を

委ねることにしています。

 すると、若い日に愛読した八木重吉詩集のこんな一節

が浮かんでくるのです。

       このあかるさのなかへ

       ひとつの素朴な琴をおけば

       秋の美しさに耐えかねて

       琴は静かに鳴りいだすだろう

  この詩には、どんな思想も歌われてはいない。けれど、読み手にとっては秋の日の美しさと、それを美しいと感じている

 詩人の感受性が、そのまま伝わってくるのです。

  いつの日か、その絵の前に立っただけで秋の陽射しを浴びて輝く紅葉を共有できるような絵を描けたらいいなぁ・・・

 そんな夢を抱いて走り続けることにしましょう。

( 東京国際女子マラソンで復活Vを果たした高橋尚子さんの記事が載った新聞を傍らに置きながら・・・。)

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