エッセイの部屋 (2004年2月)
第17回・・・ (花に囲まれて )
「呼び水」 という言葉を広辞苑で引くとこんな説明になります。 1・・・ポンプの水を導き出すために別の水を注ぎ込んで水をつなぐ こと、またその水。
2・・・あることを引き出すきっかけを作ること、またそのもの。 私が心の中に、たゆとう絵を具体的な形にする作業ににているなと、ふと思いました。 絵を描くきっかけ、それはなんといっても美しい花に出会った時。ああ、なんてきれいなの・・・とうっとりと 見入る。そのひとときはかけがえのない幸せな時間ですが、白い紙の上に程なくどうすればこの美しさを 留めることができるのかしら、と思い巡らしているのです。
今までの経験から、先ずはスケッチをすること。それと同時にその花は、葉は、そして茎はどんな色で できあがっているのかを観察することです。そして様々な色をパレットに溶いて、混ぜ色などもしながら あれこれ試し塗りをしてみる。そうこうしているうちに目の前の花は、色あせて朽ちてしまうことも珍しく ないのですがごくまれに花の方から、 「描いてご覧なさい。」 と促してくれることがあるのです。 そんな時はもう、作品の半分はできあがったも同然で花に導かれるように気持ちよく筆が運びます。 でも、そんなことは本当に希有な場合でありまして、おおむねはウンウン唸りながら産みの苦しみを 味わっているのです。 「どうして好きな花のためにこんなに苦しまなくてはならないの・・・」 なんてつぶやきながら・・・。 色とりどりの花に囲まれながら、こんな風に迷い、悩み、苦しむことが多いのです。そしてその中に 身をおける幸せと元気も花からいただいています。ときおり漂わせてくれる良い香りはきっと花からの 励ましなのでしょう。