エッセイの部屋  (2004年1月)

第16回・・・ (雪 景 色 )

 音楽は色だと言った人がいます。

その話を聞いた時から、音楽と色を結びつけて考える習慣ができました。

先日、と言っても昨年の秋ですが豊橋に千住真理子さんがいらっしゃってコンサートが開かれました。

運命的な出会いをしたというストラデバリウス・デュランテから流れ出るその音色は、透明なブルーで

聴き終わってからしばらくはその音色が心から離れませんでした。確かに音楽と色は、密接につなが

っている事を認識した出来事でした。

 そんなふうに考えますと、今私の心の中に雪景色が広がっているのは昨夜聴いたバッヘルベルの

カノンの影響かも知れません。私の故郷は今、雪の中。そこに暮らす人々はあきらめにも似た気持ち

で厳しい寒さに耐えながらひたすら春の訪れを待ちます。
 
 いただいた年賀状の中に幼なじみのこんな文面がありました。

「三さ子ちゃんの住んでいる豊橋は冬でも花が咲いているんですってね。花の好きな私にとっては羨

ましい限りです。」

 いつか私が、この土地は椿や山茶花、水仙などが咲くので冬でも花の絶えることが無いと言ったこと

を覚えていたのでしょう。確かにそのおかげで真冬でもスケッチに出掛けることができます。メジロや

セキレイの声を聴きながら寒椿を描いている時など、温暖な土地に生活していることの幸せを感じるの

も事実です。

 でも、凍て込みが厳しければ厳しいほど、春の訪れもまた嬉しいものなのです。

 ときおり雪景色に出会いたくなるのもそんな故郷を持っているからかも知れません。この冬はちょっと

旅に出られない事情がある私は、せめて白い紙の上にそんな風景を再現してみたくなりました。

 ペインズグレイ、この絵の具が今日描く雪景色の決め手です!

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