エッセイ  (2003年9月)

第13回・・・芙蓉(ふよう、はかなさゆえの美)

 芙蓉が咲き出すと秋が近い、そんな話を聞いた事はありませんか?

暑くて寝苦しい夜が明け、東の空が白みかけた頃にスケッチに出かけるのが最近の私の夏の楽しみと

なりました。

  長年習慣となっていた子供のお弁当作りから、解放されたされたゆえの時間の使い方とも言えるでしょうか。

それとも早起きが苦にならなくなった年齢になってきたのかも・・・

 ひんやりとした外気に包まれると、昨夜のあの熱帯夜が嘘のように感じられます。同じ思いで外に出てくる人

が多いのでしょう。夏の朝は驚くほどたくさんの人が早朝散歩を楽しんでいます。一様にすがすがしいお顔で、

というのがいいですね。

 この季節に描くのは芙蓉、木槿(むくげ)、朝顔などです。どれも朝開いて夕暮れにはしぼんでしまう一日花。

中でも大きな花を咲かせる芙蓉の花びらは、驚くほど繊細でちょっと触れただけでも傷ついてしまうほどです。

 このはかなさが一層この花の美を深いものにしているのかもしれません。永く留まることのない命であると

知ったならば、限りある時間の中でこちらも精一杯の努力をして、せめて白い用紙の上にその美しさを留めた

いもの・・・そんな願いが自然に呼び起こされてくるのです。

トップページへ戻る
旧エッセイの部屋一覧へ