エッセイ第10回 (2003.3) 四季のバトンタッチ・・・雪から桜へと 

      美しさでも高さでも日本一の富士山、まだ登ったことはありません。一番

   近くで見るのは、時折上京する時の新幹線の車中から、または東名高速道路

   の由比あたりを走っている時でしょうか。新幹線では富士川橋梁を過ぎた時、

   そして東名高速では由比のトンネルを抜けたとたんに眼前に広がるその雄姿

   には目を見張るものがあります。

    特に山頂に雪を戴いた冬の富士山はことのほか美しく、世界に誇れる日本

   の山です。その富士山頂に降る雪も、京都の町に降る雪も同じであると作詞

   家は詠いました。また一方では津軽には7つの雪が降るとも詠われています。

   季節はずれに東京で降った雪を、別れのホームでなごり雪と称した人もいま

   した。

    このように様々な表情を見せる雪ですが、私に北陸日本海に面した地方で

   重厚な格調高い雪が降るのを見たと語った人がいました。その言葉にひかれ

   て、そんな雪が見たくてこの冬北陸金沢から能登へと旅をしました。2月だ

   というのにあいにく期待していた雪、雪、雪・・また雪の世界には出会えま

   せんでしたが、それなりに収穫のあった冬の旅でした。

    四国高知からは日本で一番最初にソメイヨシノが開花したというニュース

   が届きました。その桜前線が北上を開始したようです。東北や北海道にその

   前線が達するまでには、まだまだ時間が掛かりそうです。富士山と並んで、

   日本のシンボルである桜の花、この桜も雪と同じく、各地で様々な表情を見

   せることでしょう。雪から桜へと四季の歩みは、確実にその美しさのバトン

   タッチをし始めたようです。  

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