新エッセイの部屋

 第 40 回  萩・・・2008

                       ( H20年10月12日 )

  「花野」という秋の季語にあなたはどんなイメージを抱かれるでしょうか。おそらくは紫を基調とした色とりどりの

 秋草が風に揺れる情景を思い浮かべるのではないでしょうか。

  そんな中でもとりわけ萩、優美な白萩、赤紫の可愛らしい山萩が真っ先に思い浮かぶのは山上憶良が詠んだ

 秋の七草の歌で、萩が筆頭にあげられているからかもしれません。

      《 秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数うれば 七草の花

         萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝顔の花 》 ・・・・万葉集

  9月の水彩画教室を迎える頃には、萩の花が満開に

 なるだろうと思って、名古屋教室の終了間際に

 「次回は萩を描きますから皆さんの身近にある萩の花

 をスケッチして練習しておいて下さい。」

 と通告しました。

  言った手前、私自身も出かけるたびに萩を探しては、

 スケッチをしました。それで気がついたことは萩といって

 も随分種類が有るということでした。 

  山歩きで出会った萩、川沿いに咲いていた萩、知人の庭で見かけた萩、そして絵のモデル用に買い求めた鉢

 植えの萩。皆それぞれに趣が違っていて面白いのですが、作品にすると大部様子が変わってくるのです。

  花は豆科共通の蝶形花ですが、葉の形と葉のつきかたに特徴がそれぞれあって、マルバハギ、キハギ、ツク

 シハギ、ミヤギノハギ、ヤマハギと、専門家が見ればおそらく一目瞭然なのでしょうが、葉の形や花の構造など

 細かな部分で違う絵を、萩の花のお手本として提供することに戸惑いました。

  それで答えを得るべく植物の本をひもときましたら、こんな解説に出会いました。

  「長く伸びた枝に小さな花をつけ、秋風になびく萩はハギ属に属するが、実は「ハギ」という名の特定の一種類

 の植物はない。ハギ属は東アジアと北アメリカに約40種が自生している。しかし、日本では一般に木質生の強

 い枝を持つ約10種を「ハギ」と呼ぶ。」 というのです。

  そんなわけで今年2008年、私が描く萩は、長く伸びた枝に小さな赤紫色をした花をつけている雅な萩が多く

 なることと思います。 

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