新エッセイの部屋

 第 31 回  クリスマスローズ ( H20年3月9日 )

  ラジオのトーク番組に耳を傾けていたら、こんな投稿が紹介されました。
 
 私と同世代か、少し上の年代のかたかと思われる女性からのものでした。

 その人は時々自分を励ますために花屋さんで自分のための花を買う習慣があるそうです。そうした生活習慣

の中で、買い求める花の趣味が少しずつ変化してきたことに気付いて、そのことを書いたのでした。

 若い頃は大好きだったスイトピーの花だけれど、こんな弱々しさでは心許なく感じられて、先日も店頭で見かけ

たけれども買う気になれなかった。

 では、どういう花が好みになったかというと、たとえば

寒さに耐えて静に咲いているクリスマスローズ。今は、

この花がお気に入りだというのでした。

 ちょうどベランダで咲いている鉢植えのその花を部屋

に持ち込んでスケッチしていた私は思わず鉛筆を持つ

手を止めて、クリスマスローズに話しかけたのでした。

「ほら、あなたのことを言っているわよ。」

      歳時記

  季節が新しく巡るたびに開いてみたくなる本の一つに歳時記があります。俳諧で季語を分類し、解説や例句を

 つけた辞書的要素を持っているのですが、読み始めるとつい夢中になって時間を忘れることがありますから気を

 つけなければいけません。たとえば、3月を迎えるにあたってそのページを開きますと、早速仲春の言葉が目に

 飛び込んできます。「暑さ寒さも彼岸まで」というように、寒さと暖かさが交替する時期で、南国では菜の花や桃の

 花に蝶が舞い、北国ではなお雪深いけれど、雪の下にはものの芽も現れ始めるというような注釈がついていて、

 私の想像力を遙かな土地へ誘います。

  更に3月の項を読み進んでゆきますと、

 「雪の果」、 「北窓を開く」のような美しい

 言葉が登場して来ます。こんな時は記憶

 に残った単語をメモしておいて、個展の時、

 作品に添える題名に使わせてもらったりし

 ます。心の琴線に触れる季語に出会うこと

 で絵が描けたという経験は結構あるのです。

 それでいて未だかつて俳句の一つが詠め

 ないのです。どなたか俳句作りを伝授して

 下さいませんか。

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