新エッセイの部屋

 第 29 回  年末のスケッチ ( H20年1月 )

  テレビの天気予報は、年末に寒波がやってくることを繰り返し伝えています。

 「明日はその前の貴重な一日になるでしょう。」と。つまり、寒波襲来の前に大掃除を済ませてしまいましょう

 というのです。

  確かに寒風の中での窓ガラスふきは大変ですよね。でも小春日和の穏やかな日には、大掃除よりも大切

 なことがあるのです。それは何かというと、去年の冬、描きそびれてしまった山茶花を今年は描きたいこと。

 出来ればその花の絵を飾った部屋で新しい年を迎えたいものだ、などと考えているのです。

  山茶花の花のスケッチはどうしても郊外の北風の吹き荒ぶような場所で、ということになります。ポカポカ

 陽気の日であれば、それに越したことはありませんゆえ、二者択一を迫られたときは、私は好きな方を選ぶ

 ことにしています。

 さあ皆さんは私がどちらを選ぶかは、だいたい

想像できますよね。

 そうです、大掃除日和のその日、私が出掛けた

のは、豊橋中央図書館の敷地内にある山茶花の

木立の中でした。

 図書館の営業も年内最後とあって、どなたも忙

しそうに行き交っています。そうした中でのんびり

とスケッチするのもおつなもので、今年は山茶花

の傍らにめじろを描き加えてみようかしら、などと

 思ったりしています。

  あくまでも、大掃除は二の次にという姿勢でいる私なのですが、それだけに思い出されるのが、幼い頃の

 年末風景でありました。

  父の総指揮の下にたっぷり二日間をかけて行われた大掃除。家中の畳を庭に出してパンパンパンと一

 年間の埃をたたき出すことから始まって、障子張り、ガラスふき、拭き掃除と息つく暇なく大人達はよく働き

 ました。

  幼い私は、大人達の邪魔をしないようにすることが仕事だったようで、縁側のはじっこで自分の小函の整

 理を仰せつかっておとなしくしていたような気がします。

  時代は大きく変わり、昔ながらの大掃除風景は見かけることが少なくなりました。でも、新しい年に向けて

 新たな目標を準備することだけは、忘れないようにしたいですね。

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