新エッセイの部屋

 第 26 回  秋の七草    ( H19.10 )

  夏空と秋の気配を漂わせた雲がせめぎ合うこの頃の季節になると、秋の七草が気になりだします。

  万葉集で山上憶良が詠んだ七草の歌に記されているあの花々のことです。それによると、秋の七草とは
 
 萩、尾花(すすき)、葛、撫子、女郎花、藤袴、桔梗が該当するようなのですが、撫子などは自然の中では

 なかなか見られない花になっています。

  それでも郊外に足を延ばせば幾つかの花に出会える地の利を利用して、毎年七草に逢うためのドライ

 ブに出かけています。

  今年は葛の花が豊作で、そこここで甘い匂いを漂わす赤紫の花に出会うことができました。

  秋の七草のひとつに掲げられているだけあって、確かにそれなりの風情を持った花ですが、豆科の花

 が散りこぼれたあとには、可憐な花からは想像もつかない毛むくじゃらな豆が育っています。

  しかも葛の蔓の伸びる勢いといったら周囲の木々の都合なんておかまいなしにどんどん伸びていって

 うっかりすると葛の葉で覆い隠されてしまう程のエネルギーに溢れているのです。

  葛の花を描くときはいつも、「人は見かけによらないなぁ、もとい、花は見かけによらないなぁ・・・」

 等と呟きながら、今年もまた可憐な花の絵を描き上げました。いつかあの獣めいた実と生命力に溢れ

 た蔓を宿した葛に挑戦したいと願いながら・・・。

 秋の七草に出会う季節は、紅の彼岸花の季でもあります。

個人的な意見としては、秋の七草のひとつに是非この彼岸花を入れ

て欲しい。縁起の悪い花として忌み嫌う風潮もあるようですが、花を

描く目線でこの植物と対峙してみると、その完璧な美しさにほとんど

言葉を失います。

 この際、私ならではの秋の七草を選んでみようかしら。

 皆様もそれぞれの感性で選んだ秋の七草を教えてくださいませ

んか?。

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