新エッセイの部屋

 第 24 回(H19年7月)  恍惚の里(飯島勝彦著) 

  私の兄は定年退職した後、長野県で農業を営みながら小説を書いています。1998年に地上文学賞をいただ

 いた後、更に農村をテーマにした小説を書き続けて、日本農民文学賞(04年)、山室静・佐久文化賞(06年)

 などを受賞するという快挙を遂げ、今日に至っているのですが、その兄から昨年の暮れ近く連絡がありました。

  3冊目になる本を出版する準備をしているのだけれど、表紙絵を描いて欲しいというのでした。

ほどなく400字詰め原稿用紙にして300枚に及ぶ原稿のコピー

が送られて来ました。私もだんだんその気になって先ずしたことは

新刊書コーナーに通って、今時の本の表紙絵が、どんな傾向に

あるかなどの研究でした。

 小説を読ませてもらった印象の中で、一貫して流れていたのは

都忘れの花のイメージでした。これは私が花を描く絵描きだった

からかも知れません。

 シンプル イズ ベスト というのが新刊書コーナーで学んだこ

とだったのですが、実際に手掛けてみますとなんだか力が入って

しまって、額に入れて観賞してもいいような絵が出来上がってしま

いました。

 それで、出来具合はなかなか良いと思って送ったのですが、作者にしてみれば小説の主人公である若い女性

の姿をどうしても入れたいという思いがあった様子で、いろいろ追加して送った後は編集者に委ねるということに

なりました。そして出来上がったのがこの本です。

 若い頃、執筆を職業にしたいという夢を抱きながら、農家の長男という立場ゆえに断念した兄が、様々な過程

を経て今、作家という道を歩み始めたこと、それに対して絵描きという立場で協力できたことを感謝しています。

 本の題字は兄の奥様によるものです。「恍惚の里」---郷土出版社発行、この本は最寄りの本屋さんで注文に

より、取り寄せていただくことができます。(定価 1,680円)

 よかったら一冊手元に置いて、現代の農村に展開されている一つの青春像などかいま見ていただければ幸い

です。

上の二つの原画を組み合わ

せて右の表紙絵となりまし


 「恍惚の里」 あとがき、で作者、飯島勝彦が述べている一部を引用して紹介します。

 「・・・ 表紙の絵と書中のカットは、私の妹の吉沢三さ子が描いたものです。豊橋市に在住し、NHK文化センター

  (名古屋・豊橋)水彩画講師をしています。花が専門なのですが、女性の顔もと注文をつけ造作をかけました。

  題字は妻の敬子が書きました。

  全て身内でまにあわせたのですが、友人の吉川徹さん(元望月町町長)の推挽に従ったものです。・・・・・」

書中のカットはモノクロですが原画は上のようなものです

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