新エッセイの部屋

 第 19 回(H 19 年 1 月)  秋 海 棠 

  秋海棠と書いて { シュウカイドウ }と読みます。

 秋の字が示すとおり、その季節にふさわしい花だと思ってきました。花屋さんの店頭で買い求めた鉢植えも確か初秋

 だったかと思います。

  ベゴニアと同種と言われるだけに可憐な花も、一風変わった葉の感じも良く似ています。ですから描いてみるとその

 違いを表すのに苦労します。

  ベゴニアと同じだと感じるのは、結構ほおっておいても

 機嫌良く咲いてくれるという点でありまして、どうかする

 と存在すら忘れて時間がくるとベランダの花に水をあげ

 る、その中に確かそんな花もあったなあ・・・と思い出す

 ほどの自己主張の薄い花なのですが。

 寒波が幾度か訪れた年末のある日、ふと秋海棠の鉢植

 えが気になりました。ベランダの掃除をしていた時、足元

 にひとひらの透明な輝きをたたえた花びらが落ちたのです。

  摘みあげてみたとたん、魔法にかかってしまいました。  「 なんて綺麗な色をしているの! 」

 そうなると、やり掛けていた家事もほどほどにスケッチにとりかかるというのが私のいつものパターンです。その花の

 知識欲も旺盛になります。例えば秋海棠の旬はいつなのか?なぜかといいますと、年末に近い季節にベランダの住

 人である我家の秋海棠は、えらく元気に咲き誇っていたものですから。

  ものの本によると、開花は9〜10月となっています。中国、マレー半島原産の多年草で日本には江戸時代に渡来

 したそうです。庭植、鉢花、茶花などに利用され、半日陰と多湿を好むとされています。

  雌雄で花の形が異なり、雄花は大きい2枚の萼片と小さい2枚の花弁を持っていて、雌花は花弁を欠いている。

 それがアンバランスの美を生んでいるのでしょう。

  アンバランスと言えば葉もまた特別な形状をしていて、シンメトリーの葉が多い中で特殊です。それがまた魅力と

 言えるでしょうか。

  「片思い」という花言葉も、左右が微妙にずれた葉を見れば、頷けるというものです。なにはともあれ、秋海棠に

 心を奪われてしまった年末となりました。

  年賀状の作成と大掃除は先延ばしにして、アンバランスが魅力的なこの花に付き合うことにしましょう。

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