エッセイの部屋 (2004年3月)
第18回・・・ (花の心 )
花の絵を描くうえで一番大切な事と言えば、それは花と心を通わすという事でしょうか。
「花に心なんてあるの?」
という問いが返ってきそうです。
いつでしたかあるテレビ番組でそんな話を聞いた事があります。話しかけながら花の世話
をすると、より綺麗な花を咲かせるというふうな・・・。
信憑性はともかくとして、少なくとも心を持つ人間はいつの時代でも花を愛でて生きてきま
した。個人差はあるにしても、花が大嫌いだという人にはいまだお目にかかった事があり
ません。反対に花が大好きな人には、ここそこで出会います。
どうやら私も花が大好きといえる部類に入るらしくて、絵の題材も花以上のモデルは考えられません。
花を描くための材料として水彩絵の具は最高の画材だと思っています。とりわけ透明感のある花びらを
描くのに、これほど相応しいものを他に知りません。色数も豊富で水で溶かしたり、洗い流したりできる
ことも気に入っている事の一つです。
透明水彩画の基本的な技法である滲みやぼかし、重ね塗りといった方法を駆使して柔らかな花びら
を白い紙の上に再現していますと、目の前でモデルになっている花が手を述べて創作を誘導してくれ
ていると感じるときがあります。そんな時にはこちらの心も素直で柔らかなものになっています。
「背伸びをしなくていいんだよ。感じたそのままを素直に描けばそれでいいんだよ。」
花はいつもそんなふうに私に語りかけてくれるのです。