エッセイ 第4回・・・ 水彩画講師 (2002.9

 NHK文化センターの水彩画講師としての歩みも、この10月で6年目を迎えます。初めてそのお話を

いただいた時には、人にものを教えるなんてとんでもない、第一そんな柄ではないのだからと躊躇しま

した。でも周囲からは、 「いいじゃない、やってみたら。」とか 「教える、というより共に学ぶという気持

ちで歩み出されたらいかがですか。」とアドバイスされて、その方向でお引き受けしました。

 歩み出してみたら、まさにその通りで教えることは学ぶことなのだなあと実感したのでした。それまで

はもっぱら家で絵を描き、個展や出版社からの依頼で描いた絵が人の目に触れるといった具合だった

のですが、教室では多くの人の視線の注がれるもとで描くわけですから、慣れないことをするのは大変

です。宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」の如く、次回までにここをマスターしなければ、と自分に言い聞

かせることの連続でした。でも、慣れてみればそれもまた楽しいことで、具体的に自分に課題が課せられ

るということは良いことでした。

 NHK文化センターの中では、年に一回、ギャラリー展示という方法で教室の皆様の作品を観ていただく

機会が設けられているのですが、今年は少し頑張って豊橋市内の画廊(ギャラリー48)でもやらせてい

ただきました。時間、予算共にお一人一人の負担が増えるわけで、どんな風に事が運ぶことだろうと危惧

しましたが、案ずるより産むがやすし、とはまさにこのことでした。私は素晴らしい人たちと一緒に創作活

動をしているんだなと、幸せを感じた4月の作品展でした。

 先生と呼ばれることには一抹のためらいがありますけれど、多くの出会いを約束された水彩画講師とい

う立場はこれからも大切にして行きたいと思います。私自身の絵の師は自然です。自然の中に身を置い

て静かに耳を傾けていると、いろいろなことが心に流れこんできます。この秋もそんなふうにして、新しい

絵を描き続けることでしょう。
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