エッセイ (第2回 2002.7)   バラへの想い


 バラを描きたいと思いました。ある日、散歩をしていて見知らぬお宅の垣根越しに桃色の

バラのつぼみを見つけたとき。

 朝露に濡れてそのつぼみは、もう少しで開こうという状態でした。いつまでもそこに佇んで

いたい、そんな衝動を抑えて私はその場を離れました。

 その日のうちに花屋さんを探しました。あのバラのつぼみと同じ花を見つけたかったので

す。そして心ゆくまでスケッチをしてみたかった。私の実力ではまだ彩色するのは無理なこ

とはわかっていました。でもスケッチを重ねれば、いつか描けるようになることも。

 何軒もの花屋さんを回ってみたのですが、同じようなバラのつぼみは見つかりません。諦

めきれないでいたとき、ふと閃きました。そうだ!今まで切り花ばかり探していたから見つけ

られなかったのかもしれない。鉢植えの花だったらいろいろな状態でいるだろうからつぼみ

もあるだろうし、もし無かったとしても明日つぼみになる花芽もあるかもしれない。

 見事予想は的中して、とあるホームセンタの花売り場に、つぼみをつけたバラの苗を見つ

けました。

 今にして思えば、これがベランダで何鉢ものバラを育てることになったきっかけでした。花

が咲き終わったら、一回り大きい鉢に移し替えてやり、たっぷりの肥料を与えることなども覚

えました。四季咲きのバラはそれこそ一年のうちに何回も花を咲かせるので、楽しみもひとし

おです。しかし、バラを愛するのは人間だけではないようで、明日開く予定のつぼみを夜のう

ちにハナムグリに食べられてしまったり、と天敵の多さにもびっくりです。

 マンション住まいなので鉢植えの園芸しかできない不自由さもあります。もし地植えにできた

らもっと伸びやかな成長をしてくれるんだろうなあ・・・・・・。でも、鉢植えのおかげで画室まで持

ち込んで夜でもバラの絵を描けるのは嬉しい。

 そうこうしているうちに私なりに、バラを描くようになっていました。つぼみからスケッチができ

る恩恵は確かに受けているようです。まだまだ満足のできる絵ではないけれども、毎日に水を

やり、ときにはアブラムシを駆除したりしながら育てた花を描くのは本当に良いものです。 


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