新エッセイの部屋

 第 28 回  絵を描く    ( H19.12 )

  「どうすれば絵が描けるようになりますか?」

 という問いは、比較的良く聞かれる質問ですが、応えるのにためらう問いでもあります。

  絵を描けるようになる、という概念自体がとらえどころの無いものなのですから。

  「どうすれば巧く描けるようになりますか?」

 という問いに対しても言葉を選ぶのにためらいます。私も問いたいぐらいです。

  絵を描くときはできるだけ、{巧く描こう}という思いが働かないように気をつけています。締め切りを前に

 した絵を出来るだけ早く巧く描こうなどとすると、だいたい失敗するものです。

 私は花を描く絵描きですから、いつも周りに花

があります。花屋さんで買ってくることも多いので

すが、庭で咲いていたというのをいただく機会も

あります。どこそこでコスモスが満開になったと聞

けば、それっとばかりに出掛けてゆきます。

 今では絵が好きで花を描いているのか、花が好

きだから絵を描くのか自分でもよく分からなくなっ

てしまいました。

  とにかくいつも花が身近にあることが心地よいから、季節の花を傍らに置いておきますと、花のほうから

 {描いてみない?}と誘ってくる場合があります。そんな時は、良い絵が描ける前兆なので、いそいそと描く

 準備にかかります。でもそういうことはめったにあるものではありませんで、美しい花を見て描いても十分

 にそのものを描き出すことが出来ないもどかしさが、常につきまといます。

  けれど、その全てを描こうと思わないで良く見つめたうえで、美しいと思える部分だけをことさらに描いて

 他は敢てぼかすようにしてみたら、自分なりの絵が出来あがってきた、そんな感じです。

  こんな私が今、自信を持って言えるのは、 「 絵を描くことは素晴らしく楽しい! 」ということでしょうか。

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