山本五平家住宅(商家資料館)
Yamamoto



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日南市指定文化財
宮崎県日南市飫肥8-1-9(移築)

重要伝統的建造物群選定地区に指定される飫肥城下は、武家屋敷街を中心に整然とした屋敷割を現在に伝える美しい町であるが、意外にも商業地における町家の残存率は極めて悪い。町の中心を通る国道の拡幅工事により往時の建物は根こそぎ失われてしまったためである。自動車優先の横柄なモノの考え方は全国津々浦々にまで浸透しているようである。
現在、「商家資料館」という名称で公開される当住宅も、そうした状況に全く無縁であったわけではなく、当初は現在地の道路の反対側に所在していたものを拡幅工事の折に解体消失を惜しむ声があがったため、かろうじて移築保存されたものである。
そもそも当住宅は慶応2年の飫肥城下を全焼させた大火の後、明治3年に地元の山林業者であった山本五平により建てられたもので、地元の特産品である飫肥杉がふんだんに使用されている。現在では入手不可能と云われるほどに長く樹齢を経た巨木から構成される梁や桁の木組みは見る者を圧倒する。白漆喰の土蔵造という重厚な外観に似つかわしい内部構成である。
ところで、聞くところによると飫肥杉は南方の温暖な気候に恵まれ過ぎたため成長が早く、そのため木目が荒く住宅材としてよりも、もっぱら船材として用いられることが多かったようである。飫肥杉の家というものは実は産地ならではのモノなのである


 

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