関本家住宅
 Sekimoto



日向市指定文化財 (平成9年8月25日指定)
宮崎県日向市大字細島691
建築年代/明治12年(1879)
用途区分/商家(味噌・醤油醸造販売)
指定範囲/主屋・附属屋2棟・土蔵・醸造所
公開状況/公開

瓢のような形をした日向湾に面する細島湊は湾の南岸に東西へ伸びる一本の街道沿いに形成された町で、現在においても昔ながら風情を保つ町家が数軒残されている。宮崎県北部地域における有数の港町であった細島であるが、何故かしらその雰囲気は街道筋の宿場町といった風情に近いものがある。専ら漁業を生業とする漁家よりも、商品流通に携わる商家が多く軒を連ねている故であろうか。
町のやや西部に所在する当住宅は明治12年(1879)の建築とされ、南北に細長い敷地内には主屋のほか、土蔵、厠、炊事場などの付属屋も残されている。当家は屋号を「苫屋」とし、当主は代々勘兵衛を名乗り、江戸時代以来、主に味噌・醤油の製造・販売を手掛けた富商であったらしい。元々は町の東部で商売を営んでいたらしいが、明治10年に当地に移り、住宅はその後に建て直したものとのこと。
主屋は本瓦葺切妻造平入の大壁造で、通り沿いに南面して建つ。屋敷地は間口に対して奥行きの長い地割で、町家の典型的な形態を残す。明治期の建築ながら江戸時代の様式、手法を継承しており、近世町家の特徴を多く備えている。
内部は左手に通土間を取り、右手に縦に3室設ける典型的な町家造りである。一番奥の部屋は12畳の座敷となっており、この部屋に面する主屋裏位置に中庭を設け、座敷からの眺めに彩を添えている。
宮崎県内の町家は全体的に軽快な建前のものが多いが、当家においては屋根や庇を本瓦葺とするためであろうか、珍しく重厚感溢れる風情である。まるで瀬戸内地域の町家に近い印象を受ける。交流盛んな湊町の町家だけに建築の背景を調べてみるのも面白いかもしれない。
 

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