黒水家住宅
Kuromizu



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高鍋町指定文化財 (平成2年3月13日指定)
宮崎県児湯郡高鍋町大字上江1390
宮崎県中部に位置する高鍋町は秋月家30000石の城下町として拓かれた所である。現在でも、武家屋敷街区の一画には旧城下の面影を見て取ることができる。当家は藩主秋月氏が福岡県甘木市秋月より当地に移封された際に付き従った旧家であり、代々兵法家の家柄で、幕末には家老職を務めたこともあったということである。しかし屋敷の所在する場所は大手門付近の上士屋敷街ではなく、少し外れた陣屋北方の山際にある。最初当地を訪れた際には見落としてしまったほどである。主屋の建築年代は構造形式から文化文政の頃と推測されている。屋敷内には、主屋のほか籾蔵、味噌蔵、土蔵などの付属屋も残り、特に籾蔵は藩の籾蔵として建てられていたものを明治初期に譲り受け、移築したものだということである。主屋の随所に家紋である桐がデザインされており、式台玄関の欄間や釘隠しなどの意匠として建物に厳かな雰囲気を醸してくれている。また主屋の間取りは役宅としての機能である座敷に割かれるスペースが多く、居間などの奥としての空間は僅かに割かれている程度であるが、これは以前主屋の背後にあった台所棟が取り除かれてしまったためである。当住宅は小藩における上級武家屋敷の遺構として貴重なものであり、座敷の落ち着いた造作や威厳ある佇まいは美しく、見る者を穏やかな気持ちにしてくれるものである。


 

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