海田家住宅
Kaita



日南市指定文化財(平成6年11月21日指定)
宮崎県日南市北郷町河原谷


今は日南市域に併合されてしまった旧北郷町の中心部・地名から国道21号線を5kmばかり北上すると、「河原谷入口」と書かれたバス停が見えてくる。このバス停が無ければ集落への入口など、どこにあったか見落としてしまいかねないような細い道が国道から分岐しているのだが、当家を訪れるには、更にここから4KMばかり山奥へと分け入って行く必要がある。本当にこんなところに集落などあるのかと不安に駆られながら、道を引き返すべきかと心に迷いが生じ始めるころ、前方に赤いトタン屋根の農家住居が現れる。
車道から50mほどの畦道が屋敷まで続き、その奥に東面する主屋と西面する納屋、南面する道具小屋の3棟がコの字型に配され、屋敷構えを形成する。門も塀も無く、実に開放的な佇まいである。何の案内看板も無かったので、近くの畑を耕していた婆様に「文化財の海田家はこの家か」と尋ねたところ、「文化財かどうかは知らんが、海田の家だ」と応えてくれた。地元でもこの程度の認知度ゆえに、本当に往時の情景がありのままに残されている感がある。それが実に良い。
当家のことは詳しくは判らない。規模も取り立てて大きなものではない。主屋前面に玄関らしき造作も確認されることから、相応に上層の農家建築かと考えるが、この地域の民家では「フンゴン」と呼ばれる玄関が付属するのが一般的な建前のようであるから、よく判らない。(参考・小野重朗著・九州の民家・慶友社常民文化叢書)
外観的には外壁を土壁ではなく、板壁を多用していることは山村農家の特徴であろう。

 

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