夏目漱石坪井旧居
 


熊本市指定史跡 (昭和53年4月23日指定)
熊本県熊本市内坪井町4-22

当住宅は明治の文豪・夏目漱石が熊本で五高の英語教師として在任していた際に住まいした家である。彼の代表作「坊ちゃん」のおかげで、四国・松山に漱石ゆかりの地としての看板を獲られてしまってはいるものの、実際の滞在期間は松山が3年に対して熊本が4年3ヶ月と随分長かった。
この熊本滞在中に漱石は実に6度も家移りをしている。坊ちゃん同様、よほど落ち着かない性格だったのだろう。この家は5番目に住まいしたところで、後に彼の奥さんは当家を「一番いい家」であったと述懐している。
元来は武家屋敷であったらしいが、洋風の応接室を座敷脇に付属させるなど大幅な改造が施されており、当初の姿をどこまで残しているのかは不明である。ただ玄関部の千鳥破風を二段に重ねる造作や座敷に大幅なスペースを割く点などは明らかに武家住宅の名残と云えるものである。
また近年まで某都市銀行の支店長用社宅として使用されていたことからも推察されるとおり、貸家としては結構な邸宅であったことだけは間違いない。(熊本のような地方都市では都市銀行の支店長は名士扱いになるらしい)
ところで漱石の作家デビューは随分と遅く、熊本を英国留学により離れ、帰国した後の明治38年、38歳の時のことである。熊本を舞台にした「草枕」などの名著が世に出てくるのは、実は熊本を離れて随分と経ってからのことであった



 

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