松永家住宅
 Matsunaga



山鹿市立博物館の構内に移築されている当住宅は、近在の山鹿市西鍋田に所在していた農家であったが、その構造はかなり特異なものである。肥後民家村に移築されている山野家住宅等が泗水町からの移築ということで直接距離にして約4kmほどしか離れていない場所にあり、かつ建築年代もほぼ同じであるので両者を比較してみると良く理解できる。間取りは同じヒロマ型の三間取りである。しかし屋根の架構は、片や直屋に対して、一方は直屋に対して垂直方向に三棟の角屋を突き出す変形クド造である。そもそも山鹿一帯は平行二棟造という地域性を持つが、この変形と考えられないわけではないが、かなり様子が異なる。

ところで当家が所在する鍋田地区には、国の史跡にも指定されている鍋田横穴がある地域として有名である。弥生時代の横穴墓で夥しい数が河岸断崖に造られている。この横穴墓の入り口に人物や楯などが陽刻されており、非常に珍しいものである。全国に数多く残る古墳は豪族の権威の証であるが、市井の人々の生きた証がこのような形で残っているということに価値があるような気がする。民家と同じである。


 

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