坂本家住宅
Sakamoto



佐伯市指定文化財 (平成12年9月25日指定)
大分県佐伯市城下東町9-37
建築年代/天保10年(1839)・明治8年移築
用途区分/元藩主別邸
指定範囲/
公開状況/公開 【国木田独歩館】

国木田独歩館と称して公開される当住宅は、佐伯城下のもっとも武家屋敷街としての風情を残す一画に佐伯城址の城山を背にして所在する。そもそもは旧藩主・毛利家の別邸として天保10年(1839)に建てられた御浜御殿の建物を藩の重臣であった坂本家が譲り受け明治8年に移築してきたもので、非常に由緒正しき建物であると云える。建物は藩主の別邸建築だけあって、一般的な武家住宅と比較して内部に数寄屋的な造作を見て取ることができる。また遠方の景色を楽しむためであろうか、武家住宅としては珍しく二階を備えている。建物として非常に面白いものである。しかし、現在の当住宅はこうした建物としての来歴は横に置かれ、たまたま明治の文壇に名を連ねた国木田独歩が教師として当地に赴任した際、一年間にわたって当家の二階に下宿していただけのことで「国木田独歩館」などという名称が付けられている。屋内の展示物も当然、独歩一色である。少し残念に感じる。

ところで佐伯藩の浜御殿として建築された来歴は、建物各所の造作からも窺い知ることができる。座敷の瀟洒な造りは当時の一般の民家建築では余り見られないものであるのは先述のとおりであるが、床の高さが異様に高くなっていることは海岸縁の湿気対策の為であろう。また建物前面の床下から土台石までを板壁で覆ってしまう姿も潮風から建物を守る工夫である。こうした来歴の建物は非常に珍しく、希少なものである。観光的な認知度を上げるために国木田独歩との所縁を前面に出しているが、建物の価値が判りづらくなっている観がある。独歩の関係は内蔵の上下階を利用した資料の展示だけで十分で、主屋の各所にまで配される展示物は、建物を見るうえで邪魔な存在である。せっかくの建物なのだから、こうした点をもっと大事にしてもよいと思う。
 

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