小野原本店



 
「からすみ」は日本の三大珍味とされる食材で、鯔(ボラ)の卵を塩漬にして天日に干したもの。鯔は長崎半島の先端部の野母崎地方で多く水揚げされる。からすみの名は、その形が中国製の墨(=唐墨)によく似ていることから付けられたとされる。
小野原本店はからすみ専門の販売店として知る人ぞ知る老舗名店である。地元・長崎では知らぬ人はいないかもしれない。
小野原家の初代は肥前国鹿島の出身で、安政6年(1859)に漁業と海産物商として創業。大正15年(1926)に現在地の築町に店舗を移転した。黒漆喰の土蔵造のようであるが、内壁は煉瓦を使用する防火壁となっている。
築町は長崎県庁に近く、公設市場があったため人の往来が極めて激しい場所で、周囲が近代建築に建て替わるなかで、当住宅のみが伝統的な町家建築の姿を保っている。戦時中の長崎原爆投下にも耐えた歴史の生き証人でもある。


 

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